『JAPAN IN A DAY』(製作総指揮:リドリー・スコット、トニー・スコット/11月3日から全国順次公開)は、東日本大震災から1年後の2012年3月11日に焦点をあて、その日に撮影された8000本の動画をもとに製作。同作では、個々の動画撮影者を「共同監督」と呼び、インターネットや動画投稿・共有サービスらを利用した、共同監督たちの意図や、感性や、感情らを反映した双発型の「ソーシャルムービー」としても注目を集めているという。
イベントの冒頭、ディスカッションのテーマとして、「この映画を通じて私たちは何を考えるべきなのか、その考えをどう未来へつなげていくのか」と、ソーシャルムービーの可能性という2つの点が提示された。フィリップ・マーティン監督から、「決して過去を振り返る作品にはしたくなかった」「視線は前に、未来にある作品にしたかった」などと語られた。成田監督は、製作サイドの意図を反映した編集や演出をどの程度行うべきなのかという点で同作が「実験的」な作品だったことを明かし、製作時に、「行間や余白」を作り出すことを意識したエピソードらを紹介。
為末氏は、支援活動らを通じ、被災地を覆っていたにおいなど、「情報はもっと複雑なもの」であると感じたことを紹介し、ソーシャルメディアがその複雑な情報の送受信にも対応し始めているのではと感じていることなどを語った。加藤アナウンサーは、震災発生から数日後にバラエティー番組の収録をしており、「バラエティー番組をやっていていいのだろうか」と疑問を持っていた経験を語った。3週間後に初めて取材で被災地へ行った際は、「『つらいですよね』など、何かわかったようなことを言うのが、すごく失礼なのではないか」と思い続けていたことも紹介。被災地へ足を運ぶ中で、「『こないだのバラエティー番組を見ました。久しぶりに笑いました』という声を聞いたときに、自分では何が正解かわからないけれども、与えられたお仕事や自分の役割をまっとうすることは、まちがいなく正解なのだろうということに気づきました」などと語った。
『JAPAN IN A DAY』については、為末氏は、情報を一方的に受け取るだけのものだった映画が、自ら能動的に意味を読み取っていくものになっていると感じたという。加藤アナウンサーは「あとからふとした時に、そういえば1年前はどうだったなど、じわじわと考えさせられる映画」という印象を持ち、成田監督は、「(『JAPAN IN A DAY』が)大切な人との語り合いのきっかけになれば」とメッセージを送った。(中村道彦)