オレを忘れてもらっちゃ困る。今年の菊花賞はアドマイヤメイン、ドリームパスポート、メイショウサムソンの3強対決という見方がもっぱらだが、そこに待ったをかけるのが3億3000万円の超高馬フサイチジャンクだ。
今朝の追い切りでは失いかけたプライドを取り戻すべく、ラストクラウン奪取へ、こん身のデモンストレーションを披露した。開門と同時刻の6時ちょうどに姿を現すと、DWコースに入り、6Fからスタート。4角手前から漆黒に輝く馬体を躍動させて徐々にペースアップを図り、最後は併せたロックスピリッツを半馬身捕えて、ゴール板を駆け抜けた。計時されたタイムは81秒5、上がり3F38秒9→11秒8(直一杯)。
池江寿厩舎の番頭格・吉村助手は、この最終調整に開口一番「気持ちが乗ってきた。いい雰囲気ですね」と笑顔を浮かべると「1回レースを使って素軽さが出てきたし、気持ちも体もピリッとしてきたよ。結果は別としてダービーのときは本当に状態が良かったんだが、このひと追いでそのレベルまで持っていけると思う」。
納得のいく仕上げに自信をみなぎらせるとともに、愛馬の名を失墜させたダービー11着からの巻き返しを力強く誓った。
そのダービーは初の左回り、そして道悪と悪条件が重なったもので、度外視できる。確勝ムードの漂っていた前走のセントライト記念(6着)にしても、「ゲートでチャカチャカしちゃって…。前々で競馬をさせたかったから、あれは痛かったよ。4角でも、すぐ斜め前の、視界に入る場所で落馬があったからね。残念だが、それが競馬。仕方ない」と同助手。デビューから無傷の4連勝を飾り、皐月賞で3着。この実績が、近2戦だけで決して色あせることがないと強調した。
ラストチャンスは淀の3000m。どの馬にとっても過酷な条件となるが、「心肺機能が高いし、折り合いにも不安はない。体形的にもステイヤーだから」とキッパリ。距離はまったく問題ないとした上で、大跳びのジャンクとしては「広々とした京都コースも大歓迎」と胸を張って見せた。勝負どころでの反応にやや不満が残るタイプだけに、エンジン点火をスムーズにしてくれる直線入り口までの下り坂もありがたい。
「中間はゲート練習もきっちりやってきたし、もう前走のようなことはないと思う。春はちょっと残念だったけど、クラシック最後のレースだし、何とか勝たせてあげたい」
牝馬戦線をけん引してきたオーナーメイトのフサイチパンドラは結局、3冠戦でタイトルをその手に収めることはできなかった。フサイチ軍団の威信をかけて、ラスト1冠は何としても勝たねばならない。