客「学生の癖にこんなバイトしてんのか」
嬢「違いますよー? これ一本でやってますよぉ?」
客「まったく、最近の女子大生はこんなバイトばっかりして、楽に金儲けやがってよぉ…」
嬢「えー、だからわたしは女子大生じゃないですよぉ? でも女子大生に見えるんだぁ?」
客「どこの女子大なんだ? 学校に報告してやるよ、お前らの学校の生徒はこんなふしだらなバイトしてるんだぞってな!」
嬢「だーかーらー…女子大生じゃないですよ」
基本、この会話がループ。半分わざとじゃない? って思うこともあったけど。
それがヒートアップしてくると、こっちが何度か否定してたら突然、平手でばしん!! って殴ってくる。しかもははははって笑いながら、満面の笑みでだよ。殴られた痕、結構残ってるし。
さすがにこっちも我慢ならないでしょ?
店長にあの客なんとかしてといっても、ちっとも役にたたない。
ある日の夕方、副店長から電話があった。「開店前からお客が来てて、女の子がいなくても入るっていってきかんから、早めにきてくれない?」店に入ると、そこにはあのDV男がお通しをむっしゃむっしゃ食べながら一人客席にいた。
冗談じゃない。また殴られるじゃん! 店長にその辺を話しても、「他に女の子いないから行け」と…。仕方なく席についても、例によって女子大生云々の話が始まった。
時間が早くすぎるのを祈っていると、カラオケをやると言い出したので、ステージに誘導してあげたら、「あんた、歌え」と、マイクを差し出してきたけど、全然知らない歌。こんなのどうしろっていうのよ??
「言ってくれれば歌えるやつにしたんだけどなぁ」
客「はっはっはっは」
殴る理由なんてどこにもないのに、またもや、ばしっ!!
更にはマイクでわたしの頭をごんごんと笑顔で殴り続ける。
「痛い、やめてー!」といっても、なぜかボーイが店の中にいない。
どうやら客引きにいってるらしい。
今までの怒りの蓄積もあり、わたしはこのDV男がようやく歌いだしたところを、先ほどのマイクで殴り返してやった。
その後、そのマイクを持ったまま、入口で悠長に客引きをしている店長もついでに殴ってきた。「いてぇな、なにしやがんでぇ!」最後の、でぇを言ったか言わないかくらいでまたわたしは一発マイクで殴った。
女の子あってのこの商売なのに、殴られてるのをわかってて助けないなんてありない。わたしはその後すぐ店を出て帰った。帰宅後、店長が電話してきて謝ってたけど何が悪いかわかってない。それにしても顔が痛い。キャバ嬢にも労災が必要だよ。
文・二ノ宮さな…OL、キャバクラ嬢を経てライターに。広報誌からBL同人誌など幅広いジャンルを手がける。風水、タロット、ダウジングのプロフェッショナルでもある。ツイッターは@llsanachanll