巨人二軍を観戦したことのあるファンなら、必ずそう思うのではないだろうか。
川相昌弘・二軍監督(46)の指導だと思われるが、今季、巨人の二軍選手は本当によく走る。6月29日時点、巨人二軍は68試合を消化し、チーム盗塁数は「93」。イースタンリーグはもとより、ウエスタン5球団と比較しても、ダントツのトップ数値である。
一塁までの全力失投も徹底されているらしく、高橋由伸、亀井義行といった一軍クラスが調整で試合に出ているときも、それを怠ると、容赦なく“罵倒”される。その厳しい叱責の声はスタンドまで聞こえてきた。
興味深いのは「チーム盗塁数93」の内訳だ。1位(17個)はナント、大田泰示(21)。将来の大砲候補であり、今季からはスタンスをやや広めにした打撃フォームへと改造している。これはフルスイングした際、ボールにより強くパワーを加えるためと思われる。そのホームランを意識している大田が『チーム盗塁王』(リーグ2位/同時点)なのだから、いかに巨人二軍が「走ること」を意識しているかが窺える。
関係者によれば、フロント幹部はTV視聴率の低迷を受け、人気打開策を議論した時期もあったそうだ。そのとき見出された結論は「松本匡史というスピードプレーヤーが活躍した時期は、TV視聴率も高かった」−−。スカウトや編成は当然、走塁能力の高さもスカウティングの重要チェック事項に挙げてきたはずだ。その藤村たちが一軍に定着しつつある今季、たとえ優勝を逃しても自前のスピードプレーヤーたちが覚醒すれば、ファンは希望を持てるのではないだろうか。
巨人が千葉ロッテの4番・サブロー(35)の獲得に成功した。日本ハムの元4番・高橋信二(32)も獲っている。巨人は例え話でも敗戦を前提にするのは許されないチームだ。清武英利GMは「外部からの力を入れることで、強い刺激を与え…」と一部メディアに、今回のサブロー獲得の狙いを語っていたが、藤村、大田たちの成長を遅らせることにもなりかねない。
二軍戦は主にデーゲームである。真夏のような太陽光と暑さにも負けず、必死に全力疾走を続ける若手を見せられると、『緊急補強』に「待った!」を掛けたくなるのは筆者だけではないだろう。(一部継承略/スポーツライター・飯山満)