裏番組は、TBS系日曜劇場『半沢直樹』最終回というモンスターコンテンツで、32.7%だったことを考えると、これは大健闘と言っていい。瞬間最高視聴率も8.9%と高い数字を弾き出している。RIZINがコロナ禍に入り、ゴールデンタイムでの生中継に踏み切ったのは、今回が初めて。毎年恒例の大晦日に向けて幸先のいい再スタートを切ったと言ってもいいだろう。
「今度、カンテレ(関西テレビ)の社長とタイマン張ろうかなと思うてます。っていうのは冗談で、まあ、なんすかね。前も言ってるんですけど、天心より、半沢より、阪神タイガースが一番強敵でしたね。『流石の皇治もタイガースには勝てへんか』ってみんな言うて来たんですけどね、ファンとかアンチの子が。『勝てるわけ無いやろ?!』って(笑)。タイガースに勝てとったらヤバいやろ!と(笑)。そんな感じですけど、まあ、格闘技もね、タイガースに勝てるようなメジャーなスポーツになったら俺は嬉しいです」
今大会の功労者である、ライバル団体K-1を多額な違約金を払ってトップファイターのまま離脱し、那須川天心とのドリームマッチを実現させた皇治は、生中継しなかったカンテレに対して、皇治流のジョークを交えながら試合後も悔やんでいたが、皇治はK-1の大阪大会のチケットを一人で約3000枚売ってしまう力があるほど、大阪で支持基盤がある。今回、カンテレが逃した魚は大きかったかもしれない。
同業者からは非難の声も多かったが、RIZINの高田延彦キャプテンを始め、プロレス関係者からは天心の猛ラッシュに対して倒れなかった皇治の打たれ強さは、高く評価されており、試合に至るまでのストーリーも含めて、世間の視聴者は分かりやすい皇治を支持した上で、天心の攻撃の凄さをお茶の間で体感したのではないだろうか。「最後まで立ってるだけで評価されるのはおかしい」という声を挙げた格闘家は少なくないが、彼らがこれだけの数字を叩き出せるかというと疑問符が残る。
格闘技がゴールデンタイムで生き残っていくためには、天心や皇治のようなエンターテインメント・リアルファイターがもっと増えないと厳しいのは言うまでもない。榊原信行CEOは「当初、『プロレスじゃないんだから』という発言もあったが、大会終了後には『言うだけじゃなかったな』って、ちょっと見直しました。あれだけ、覚悟を持って一歩を踏み出して、色んなものを失って、想いを持ってRIZINに来てくれたというのが、今日の試合で感じられたので、それはホントに感謝します。見直しました。言うだけじゃなくてホントに有言実行の男だなと魅力を感じました。負けましたけどね。ただ、本人は相当負けたことを悔しがってたんで、僕はそれが良かったなと思って。これで満足して、『天心と取りあえず倒されず3分3R、立っていられました』って満足した顔をしてたら未来はないと想いますけど、今日ホントに悔しいと思って、倒せなかったっていうのが、僕に対する第一声だったんで、『ホンマしょうもない試合してすみませんでした』って頭下げてきたんで、『コイツすごいな』って感じましたね」と皇治を評価。今後もRIZINには必要な戦力であるのは言うまでもない。
「格闘技を盛り上げたい」から、リスクを恐れずRIZINにやって皇治は、生中継中にスポンサーのCMも流れており、リング内外でRIZINに貢献している。批判するのは簡単だが、まずこの数字を他の選手たちが受け入れなければ、格闘技に未来はないだろう。
(どら増田/写真©︎RIZIN FF)