東北楽天ゴールデンイーグルス・田中将大投手(22)がブルペン入りし、熱の入った投球練習を行った(2月13日)。それを見守っていた星野仙一監督(64)も「素晴しい。力みがなく、前でピュッと投げてる」と称賛していたが、この日の田中はいつもとは少し違った。
「人生で初めて200球も投げました…」
キャンプ中盤に差し掛かったこの時期、実績のある投手は一気にブルペンでの投球数を増やしていく。この日、田中が放った投球数は「207球」。その理由をこうコメントしていた。
「ただ単に投げているだけでは意味がない。最初から疲れていたなかで投げたかった。(たくさんの)投球を投げることで、そのなかで自分の投げたいフォームができているかどうか…」(ぶら下がり会見で発言)
おそらく、星野監督の命じた『中5日』の先発ローテーションを意識しているのだろう。これまで、田中は主に『中6日』で先発登板してきた。登板間隔が1日縮めば、シーズンを通しての登板機会は増える。最多勝などのタイトルは狙いやすくなるかもしれないが、ペナントレースは長い。自ずと『体力勝負』になっていくわけだが、単純にスタミナを養えばいいというものでもない。力ではなく、正しいフォームで投げ続けなければ、投球のキレを失う。田中の持ち味であるスピードと威力のある直球を、『力』ではなく、『自分のフォーム』で投げようともしていた。
同じころ、甲子園のライバル・斎藤佑樹(22=北海道日本ハムファイターズ)は韓国・サムスンとの練習試合に登板している。斉藤を意識しての200球越えではないだろうか。
「周囲(主にマスコミとファン)が両者の直接対決を煽っているような節もありますが、斉藤が実戦デビューする日だから、200球を投げたということは絶対にないと思いますよ」
関係者は異口同音にそう否定していたが、田中と斉藤のこの日の投球は対照的だった。
田中は「疲れているなかでの力投」、斉藤は「低めに集める技巧型の投球」。今季より導入される『統一球』は縫い目がやや高く、「直球もバッターの手元で微妙に変化する」といった感想も出ている。同じ統一球を使っても、ノラリクラリとかわす斉藤と、時折、雄叫びも上げながら全力投球する田中。意識していないとしても、両者の性格、投球スタイルの違いが鮮明に表れたのである。
名護市での日本ハム対サムスンの練習試合に帯同したメディア陣によれば、田中が試合で放った球数は14球。「うち3球が変化球だった」と答えていたそうだが、統一球がもたらす微妙な変化を楽しむようにストレートを投げていたという。
「星野監督も2人の対決を演出すると明言していましたからね。新人の斉藤は何も失うものはありませんが、田中は違います。田中は同世代の前田健太(広島)が投手タイトルを獲得するのを去年見ていますから、斉藤個人ではなく、同世代全体へのライバル心に燃えているんだと思います」(前出・同)
勝手に敵愾心を煽るのは迷惑だろうが、対照的な2人の投球に、やはりこう思った。「直接対決が早く観たい!」。