バブル期には日本人は世界的にリッチ、と思われていて、ショッピングの際には筆者などは大変迷惑を蒙ったものだが、今や「日本人のツーリストはシブイ」という声をNYの和食レストランで働く人々から聞く。もうその店には2度と行く事もないから払わないという確信犯から、15%から20%というのを知らずに少なく置くケースなどさまざま。
ツーリストが多い店の中には、置かない客が多いというので最初からから15%を追加したチェックを持ってくるところがある。それを知らずにアメリカ人でもチップを二重払いする人がいる。私も1度それに引っかかってからは、そうした店では注意深く見るようにしているのだが、アメリカのバーやクラブは大変薄暗く、レジから打ち出されるレシートだと数字が大変細かく見ずらい。最初からチップ込みのチェックを渡すのは、グループ客に限るという規則があるのだが、ツーリストの多いNYではなし崩しになっているようだ。
今回「寿司田」で食事をした時には、支払いの日本人男性のチップの額が少なく、日本人ウェイトレスに「チップは15%前後なんですが」と言われていた。チップを催促するのは禁じられているはずだが、今ではこうしてはっきり言うようになったのだなあと隔世の感がする。
給仕人の時給は大変低く、チップに頼って暮らしているので、チップも料金のうちと考えなくてはいけないのだが、アメリカ人もけっこうシビアで、低所得層の人々で払わない人がいたり、払っても少なかったりする。かと思うと、2003年だったと思うが、とんでもない額のチップを支払った男性がいるというのが大きなニュースになった。
一体どのぐらいのチップがもらえるのかというと、忙しいレストランなら平均100ドル、ロバート・デ・ニーロ経営で有名な「NOBU」のウェイターなどは一晩に250ドルぐらい稼ぐという。ただし、日本レストランには長く勤めた者は多くチップを貰えるが、新入りにはほとんど入らないというチップを、すべてひとまとめにしてから分配する「プール式」の習慣があり、これは新入りに取っては悪習だろう。
計算も煩わしく、タイムズ・スクエアのコメディクラブなどはショーがまだ終わらないうちから、チェックを持ってきて支払いを強要するので大変な興醒めだった。チップ制は金、金、という拝金主義を助長するが、便利なところもある。
「JOES' PUB」での対応があまりに悪かったので本来なら最低でも10%はチップを支払わなくてはいけない時に、10%以下しか置かなかったので経費の節約になった。自分達の対応を反省したのか、それとも単なるケチなツーリストと思ったかは定かではない。(セリー真坂)