そんなてんやわんやの被災地では、ゴミなどの後始末や下水設備の清掃などに多くのボランティアが汗を流したが、彼らに紛れ込んで“火事場泥棒”的な輩も出没している。
まず、越水の直後には、水没して動けなくなった車のフロントガラスに「高額で買い取ります」と、連絡先が書かれたビラが貼られていた。部品だけを買い取りたいのか、それとも個人情報が狙いなのか…。いずれにしても自動車保険が効力を発揮するはずなので、契約した損保会社に連絡するのが先決だ。
また、「自衛隊に似た迷彩服を着たグループが避難者宅を徘徊している」という通報が複数あり、実際に空き巣被害が22件も発生している。常総警察署や市役所は“被災地詐欺”の注意喚起を促すのに躍起だ。
「がれき処理や家の修繕で高額を請求する悪徳業者が出てくるのは、災害後にはよくあることです。市としては防災無線で『すぐに契約せずに家族や市役所と相談するように』と住民に伝えました」(市民課)
東日本大震災では、模倣犯を恐れて詳細に報道されていないが、被災者を狙った“震災詐欺”が多発した。
「仮設住宅の居住者に、まず『預貯金のない人を優先して移転させるから、預金があるお宅は残念ながら後回し』と詐欺グループのニセの行政担当者が説明する。資産のある人は困りますよね。そこにニセ弁護士が助け船を出します。『口座の現金は私が預かる。そうすれば申請が下りる』で、ドロンです」(犯罪に詳しいジャーナリスト)
震災後、福島県では『振り込め詐欺』や『なりすまし詐欺』の発生件数が、2012年の41件から'13年には94件と激増し、被害総額は3億円を超えたという。平穏無事な生活を取り戻そうとしている日常に付け込む、まさに鬼畜の仕業だ。