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嵐の中で豪華客船が炎上した時、船長は死んでいた…客船モロ・キャッスルの謎「2」

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画像はイメージです。

 いまから80年前の1934年9月、ハバナ航路の豪華船モロ・キャッスルがアズベリーパーク沖で炎上し、乗客乗員138名が死亡する大惨事となった。翌日、無人の船体が海岸へ漂着し、大勢の見物人が集まった。やがて、出火前日に船長が死亡していたことや、乗員の多くが乗客よりも先に船を捨てて逃げたことなど、事故の詳細が明らかになるにつれ、華やかな豪華客船に隠された暗い一面もまた、次々と明るみに出た。そして、事故の影には単なる失火による事故や乗員の怠慢を超えた、悪魔的な犯罪まで隠されている可能性も浮上したのである。

 最初に火事を発見したのは見回り中の夜間当直で、午前2時45分頃に船客用書斎の筆記用具やひざ掛けなどを収納するロッカーから出ている煙を発見した。直ちに消火器を持ちだしてロッカーの扉を開けたところ、瞬間的に大きな火の手が上がり、周囲の壁紙やカーテンへ燃え移ったばかりか、天井まで焦がし始めた。当直からの通報を受け、ブリッジでは火災警報を発令するとともに消火班を編成して放水を始めようとしたが、デッキのホースは出航前に倉庫へ格納されていたため、放水開始までに炎は大きく燃え広がってしまった。

 不幸にも、出火した当日は強い風が吹き荒れており、炎が煽られて火勢を増したばかりか、船内の調度品には可燃物が多く用いられていたため、火災発見から30分ほどで船の大半へ燃え広がってしまった。ようやく救難信号が発せられたのは退船命令の後という有様で、退船に際しても乗客に対する案内や誘導は全くなされなかった。それどころか、退船命令が発せられる前に多くの乗員が救命ボートへ群がり、最初に船を離れたボートには船員しか乗っていなかったのである。

 前日に船長が急死していたとはいえ、あまりにも無様であり、多くの犠牲者を出す原因ともなった。しかし、船員のモラルが崩壊した背景には、現代のブラック企業に通じる過酷な勤務実態があり、また炎が急速に燃え広がった背景にも、ずさんな運行実態と犯罪の可能性が存在していた。(続く)

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