前座さんの一生懸命な姿に心揺さぶられ、真打のピシッとした噺にうっとりとした時を楽しんでいた…が! 外から突然「え〜私のマニフェストは〜」「○○党の○○候補を宜しくお願いいたします!」とのガナリ声が聞こえてきた。なんと寄席の近くで選挙演説が始まってしまったのだ。これには客も落語家さんもビックリ。
落語は耳を使い頭で想像する伝統芸能である。外でうるさい音を出されたら集中できんじゃないかい!! あわてて前座さんとスタッフが抗議にいったものの、秘書らしき人に「法的には問題はない」と一喝され追い返されてしまったのだという。無念。
ん? でも、これってフツ−に営業妨害じゃないの?? 法律違反じゃないの??
そこで筆者は某大学で法律の授業を受け持っている先生に疑問をぶつけてみた。
「寄席近辺の演説ですか…まず、違法として考えられるのは時間帯なのですが公職選挙法164条の61項では午後8時から翌日午前の8時までの街頭演説を禁止しています。この時間帯に演説をすると違法になりますね」
なるほど。寄席で演説が聞こえていたのはだいたい午後6時〜7時30分くらいまでだった。確かに某政党の某候補は午後8時前には撤退していた。ムムム。
「次に、建物の近くでの演説ですが、国や地方公共団体の所有管理する建物、電車やバスの中及び駅中、病院や診療所での演説は公職選挙法166条により禁止されていますが映画館やライブハウス、寄席の前での演説は特に問題ないようですね」
エーッ! 映画館前の演説でも問題ないの?? でもやっぱり、それって営業妨害じゃ…。
「そうですね。心情的には『営業妨害だろ!』って感じなのですが、法律において選挙活動はかなり優遇されているんですよ。先ほどの公職選挙法166条で禁止されている建物ですら公職選挙法144条2項によると『学校及び病院、診療施設その他の療養施設の周辺においては、静穏を保持するように努めなければならない』と書いてある程度で、違反しても罰則はないんですよ。これは過去に反政府政党への選挙活動の弾圧があった事が優遇の背景なのではと思われます。ですので、営業妨害として訴えるのは難しいかと…」
うーん。うーん。そうか泣き寝入りするしかないのか…。
筆者は他にも様々な法律家の先生に聞いてみたのだが、やはり同じような答えが返ってきた。しかし、これではあまりに不憫だ。なんとかして解決する方法はないのかな? そんな事を考えつつの参院選、筆者は寄席前で演説した候補者や政党には一切票を入れず「落ちろ落ちろ」とテレビに向かって念じてみた。結果は…見事に落選!! ギャハハ!!
そう! 寄席の前で演説するようなデリカシーの無い政治家なんて当選するわけがないのだ! …なんだかんだ言ったわりには実にシンプルな結論に行きついてしまった。
だが、言い換えてみれば国民はキチンと演説マナーも見ているというお話であり、次の選挙を狙っている方は是非、演説マナーにも気を使っていただきたいものである。
(「昭和ロマン探求家」穂積昭雪 山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou