「第94回全国高校野球選手権大会」で驚異的なハイペースで、三振を奪ってきた松井裕樹投手(2年=16)擁する桐光学園(神奈川)は、8月20日、準々決勝で2季連続準優勝の強豪・光星学院(青森)と対戦。
松井は7回まで無失点で切り抜けたが、連投の疲れからか、8回に集中打を浴び3失点。味方の援護はなく、桐光学園は0-3で敗れ去った。この試合で強豪相手に15の三振を奪った松井だが、ベスト4の壁は破れなかった。松井は「朝から体が重くて腕が振れなかった。気力だけだった」と話したが、「来年はレベルアップして甲子園で優勝したい」と気持ちを切り替えた。
ここまで、松井は1回戦(9日)の今治西(愛媛)戦で22三振を奪い、1試合の大会奪三振新記録を樹立。その後も、2回戦(16日)の常総学院(茨城)戦で19、3回戦(19日)の浦添商(沖縄)戦で12の奪三振を記録。準々決勝での15を加えると、大会通算68の奪三振となった。
残念ながら、松井は第40回大会(58年)で板東英二(徳島商=元中日)がマークした大会通算奪三振記録の83(6試合62回)には及ばなかったが、第87回大会(05年)の辻内崇伸(大阪桐蔭=現巨人)の65(5試合=41回2/3)を抜き、歴代2位の斎藤佑樹(早稲田実=現日本ハム)の78(第88回大会=06年/7試合=69回)に次ぎ、歴代3位となった。
特筆すべきは、その奪三振率。松井が1試合当たり奪った三振は実に17.00で、板東の12.05、斎藤の10.17をはるかに上回っている。春のセンバツで大会通算最多奪三振記録(60個/4試合=33回)を持つのは、第45回大会(73年)の江川卓(作新学院=元巨人)だが、その際の奪三振率は10.64だった。
春夏合わせた奪三振率では、江川が92(59回1/3)で13.96、田中将大(駒大苫小牧=現楽天)が102(91回1/3)で10.05、斎藤が104(106回)で8.33、松坂大輔(横浜=現レッドソックス)が97(99回)で8.82、ダルビッシュ有(東北=現レンジャーズ)が87(92回)で8.51。松井の17.00は並みいる速球投手と比較しても、群を抜いている。
松井はまだ2年生で来年春、夏と2度のチャンスがある。春の江川、夏の板東の大会奪三振記録の更新もさることながら、狙ってほしいのは春夏合わせた通算奪三振記録。この記録を保持するのは桑田真澄(PL学園=元巨人、パイレーツ)の150(197回2/3)。桑田の場合は三振を奪うタイプの投手ではなく、奪三振率も6.83と低い。だが、実に5回も甲子園に出場し、23試合に登板して、甲子園での奪三振王に君臨している。
松井は今回のハイペースが今後も継続できるようなら、桑田の記録更新が十分可能。ただし、チームが甲子園に出場し、今大会と同等の実力をもっていることが条件となる。
(落合一郎)