しかし、実は恐竜は絶滅を免れており、一時期は人類と共存していた。そして、今でも細々と生き残っている…という説がある。例えばメキシコはアカンバロの恐竜そっくりの土偶や、恐竜と人間の姿が共に描かれているカブレラストーンなど、共存していた証拠とされる遺物が多く出土されている。
そして、今回紹介するのがカンボジアの世界遺産、アンコール遺跡の『恐竜のレリーフ』だ。
カンボジアのアンコール遺跡は、9世紀から11世紀頃にかけて建設されたクメール王朝の建築群である。代表的な寺院遺跡であるアンコール・ワット、城塞都市の遺跡であるアンコール・トムなど複数の建築群から成る大規模な遺跡群だ。このアンコール遺跡東部に、タ・プロームという寺院の遺跡がある。仏塔に大きな顔が彫られた観世音菩薩像や、遺跡に根を張るガジュマル群といった自然と文化が渾然一体となった景観が魅力的な遺跡である。この独特の景観はアンコール遺跡の中でも特に異彩を放つものであり、映画『トゥーム・レイダー』の撮影が行われたりもした。
このタ・プロームにある門の一箇所に、奇妙な動物が彫られているのだ。四つ足で歩き、背中に花びらのような背ビレを生やした奇妙な生物…どこからどう見ても中生代に生きていたステゴサウルスとしか思えないシルエットなのだ。しかし、タ・プロームが建立されたのは12世紀頃。恐竜が絶滅したとされる時期からは大きく隔たっている。このレリーフをして、「実は恐竜はジャングルの中で生きており、人間と共存していたのだ!」とする説がある、のだが…。
実際に現地へ赴き、実物を見て写真に納めた山口敏太郎氏は「恐らく、サイなどの動物をデフォルメして彫ったものではないか」とみている。実際、よく見るとサイ独特の鎧のような皺ににた彫り込みがされているのも解る。
とは言え、当時の人が実際に何をモチーフにしてこのようなレリーフを作ったのかは解らない。もしかしたら既に絶滅してしまった動物かもしれないし、架空の、全く空想の生き物を彫り込んだのかもしれない。果たして、このレリーフの正体は何なのだろうか?
(山口敏太郎事務所)