前哨戦の富士Sはハナ差と薄氷を踏む勝利だったが、「抜け出してから安心したのか、ソラを使っていた。それだけ余裕があったということ」と田中勝騎手。「(デビューした時から)期待していた馬が、ようやく本物になった。本番も楽しみ」と意欲満々に話していたのが印象的だった。
GI挑戦は今年の安田記念に続いて2度目。結果はウオッカの前に13着と敗れているが、「あのときに比べると状態は雲泥の差」とケイコ役の玉舎助手は強調する。
というのも、春はまだ体質が弱く、1度使うと疲れがたまり、回復に時間がかかったからだ。安田記念も休み明けのマイラーズC(5着)の疲れが抜け切っていなかったという。
変われば変わるもの。ひと夏を越して、まさに別馬のごとし。「体質が強化され、芯が強くなった。富士Sを使った後もすぐに回復したから、順調に乗り込みを消化できた。状態は文句ない」と玉舎助手。一方、宗像調教師も「大一番に向けて青写真通りきました。あとは輸送さえうまくこなしてくれれば」と仕上がりの良さに太鼓判を押した。
振り返れば、昨夏の新潟シリーズで500万条件を勝ったのをきっかけに、半年間で東京新聞杯を含め6戦4勝(全てマイル)、2、3着各1回と複勝率10割をマーク。底知れぬパワーを見せつけている。
遅ればせながら素質に体力が追いついたとなれば、もう怖いものはない。「不安より楽しみの方が大きいですね」。スタッフ全員が力コブをつくった。
【最終追いVTR】田中勝騎手がまたがり、坂路800メートル52秒1→37秒7→12秒5(馬なり)。3頭併せを最後尾から追いかけ、楽な手応えのままラスト1F付近で前2頭と合流。最後は鞍上が手綱を抑えた関係で1馬身遅れたが、動きは実にパワフルで気配は文句なしだ。