いかさんは、1934年生まれの84歳。身長144センチの小柄な体格を生かして、映画や舞台に出演していた。コメディアン、俳優としてだけでなく、作曲家として日本マーキュリーレコードに在籍していた時期もある。
いかさんは、夢野久作の幻想小説を実験映像の旗手である松本俊夫が映画化した1988年公開の『ドグラ・マグラ』に出演したほか、林海象監督、永瀬正敏主演の私立探偵濱マイクシリーズの第1弾『我が人生最悪の時 THE MOST TERRIBLE TIME IN MY LIFE』に出演するなど、コアな日本映画には欠かせない人物であった。2012年公開の『テルマエ・ロマエ』では銭湯にいる老人役で話題となった。2017年には大東建託の「いい部屋ネット」のCMに出演し、桜井日奈子や鈴木福とも共演している。
いか八朗の芸名のモデルは、プロボクサーからコメディアン、俳優に転じたたこ八郎から取られている。たこは1985年に海水浴中に亡くなってしまい、以降は「本家」不在の状態となった。
いかさんはコメディアンとしてショーパブにも出演もしており、新人時代のB21スペシャルのヒロミなどもお世話になったようだ。さらに、2000年代に入ると老人ビンボーさんとして、『銭形金太郎』(テレビ朝日系)にも出演した。対応したレポーターは激しいツッコミで知られるくりぃむしちゅ〜の上田晋也であったが、いかさんのマイペースぶりに完全にのまれていた。この時は、古びたアパートに住んでいたので、晩年はつつましく暮らしていたのかもしれない。
通夜は6月2日、お別れ会は6月3日に執り行われる。広い世代から“かわいい笑顔”と愛された、いかさん。ご冥福をお祈りしたい。