ハライチと言えば、2009年のM-1グランプリで注目されて以降、休止期間をはさみ4大会連続で決勝に進出するなど高い評価を受けている実力派漫才コンビだ。2人のスタイルは「ノリボケ漫才」と呼ばれている。岩井の放った語呂合わせのボケに相方の澤部佑が突っ込まないままついていき、さらにボケを被せて笑いを増幅させていく。澤部で笑いが起こるパターンをとっているため誤解されることもあるが、ネタのすべては岩井が作っている。
岩井が“腐り芸人”と呼ばれるようになったのは、自身がネタを作ってコンビの知名度を上げたにもかかわらず、澤部だけが売れていく“コンビ格差”に原因があるだろう。好感度の高い澤部は、『なりゆき街道旅』(フジテレビ系)や『PON!』(日本テレビ系)など多くのレギュラー番組を持っている。
一方で岩井は、地方局やインターネットテレビ、ラジオ番組といった仕事が目立つ。コンビでの出演時にも澤部の影に隠れることが多く、“なぜ、澤部ばっかり…”という不満を抱え続けた。その結果、例えばテレビでドラマの宣伝をする役者を持ち上げ、それっぽく笑いに変えている状況を“お笑い風”と評し、自分はそうはなりたくないと尖った言動を取り始めた。これが“腐り芸人”と称され、コアなお笑いファンから支持された。
ところがここ数年、その尖ったキャラクターとは正反対とも言える動きを見せている。6月に2週連続で放送された『ゴッドタン』(テレビ東京)の「マジ歌ライブ2018 in 横浜アリーナ〜今夜一発いくかい?〜」では、“ネコと千葉雄大が大好き”という趣旨の歌とダンスを披露。
“腐り芸人”どころか「ニャンニャン」と身をくねらせて踊る姿は、大衆に愛嬌を振りまくのとは真逆のパフォーマンスだった。一見するとキャラクターが迷走している状態とも取れるが、お笑いファンはそのギャップを喜んで受け入れているようだ。
こうした尖ったイメージとはギャップのある岩井の方向性は、今に始まったことではない。幼少期から少女漫画やアニメ好きだったという部分が大きいようだ。『TVBros. 2018年8月号』に岩井が連載している「でもあの子、俺じゃなくて主人公のこと好きなんだよな。」の中で、「僕はロボット系のアニメが苦手だ」とした上で、逆に好きなジャンルは「それ以外」としながらも、特に「男性アイドル系やBL系アニメ(が好き)」と書いている。
その願いが叶ったのか、今年4月からは岩井単体でアニメに特化したラジオ番組『ハライチ岩井勇気のアニニャン!』(TBSラジオ)がスタート。アニメ声優をゲストに招いて熱いトークを繰り広げており、同じ趣味を持ったリスナーからも支持を集めつつあるようだ。
「ハライチの岩井さんは、今年8月に行われる『TBSアニメフェスタ』で司会を任されています。アニメファンから支持を集めているという情報が、業界内でも知れ渡っていたからでしょう。岩井さんは、相方・澤部さんのように幅広い層から人気を得ているというよりも、熱量の高いファンがジワジワと増えていくタイプ。“コンビ格差”が埋まるかは分かりませんが、それぞれのキャラクターが映え始めたのではないでしょうか」(芸能ライター)
それぞれ全く違う個性で独自の道を歩むハライチ。今後もそのスタイルのまま突き進むことに期待したい。