通常、十両と幕下の入れ替えは3〜5人前後だが、八百長問題で関取が17人減ったため、来場所はその穴埋めをする必要が生じていた。ただ、一挙に17人を補充せず、幕内、十両の定員をそれぞれ2人づつ削減し、まずは13人を埋めることとなった。
この結果、7人の新十両と、6人の再十両が生まれたが、前代未聞の珍事が発生。このうち、新十両の荒鷲(花籠)、再十両の垣添(藤島)が5月場所で、負け越して昇進という異例の事態となった。垣添は西幕下筆頭、荒鷲は東幕下3枚目で、星取はともに3勝4敗だった。
番付が下の序二段下位や序ノ口では編成上の関係で、負け越して番付が上がることはあるが、それより上でこのような例はあり得ず、負け越しての十両昇進は戦後初の珍事となった。
元小結の垣添は「複雑だが、審判部の方が決めてくださったこと。プロとして堂々と土俵に上がりたい」と話し、新十両の荒鷲は「恥ずかしい気持ちもある。出稽古をしてがんばりたい」と気を引き締めた。
異例の昇進について、番付編成の責任者である貴乃花審判部長(元横綱・貴乃花)は「運をつかんだ力士は、それも実力のうちだと思います」とコメント。
八百長問題で大量処分者が出ていなかったら、100%十両昇進はあり得なかった垣添と荒鷲。“タナボタ昇進”のレッテルは付いて回るが、それを払しょくできるかどうかは、来場所での活躍次第となる。
(落合一郎)