2年前、知人から「とても強い霊感の持ち主」と紹介された女性である。彼女は小さい頃から意味不明の悪寒を感じたり、部屋の隅に人の気配を感じたりと突如、不思議な感覚に襲われることが多かった。しかし、そのようなことを言って、ことさら霊感の強さを吹聴したがる人間は少なくない。
だから、それだけで彼女を特別な能力のある人間と判断することはできなかったが、いくつかの話が私の興味を引いた。
ひとつは世間を揺るがす大きな事件が起きる前に、複数の色彩だけの空間にいる夢を見るという。
最近では何かが起きる前兆だと気づくが、それが何かまでは分からないと彼女は話してくれた。そして、突如襲う気配や予知夢のようなものが見える自分の性質、体質を忌み嫌っていた。
彼女の抽象的な「色」に関する表現と「自分の能力を恨む」という考え方は、本物の特別な能力を持つ人間に共通する感覚だ。科学的な根拠を超えた能力、本当の超能力を備えている人間は、あまりその能力を人前で披露しようとはしない。能力を備えているが故に、嫌な経験を被(こうむ)ることが多いからだ。
超能力者であると自己申告する人間がその能力に対して畏怖と不安を抱いているか? それは私にとって本物かどうかを判断する重要な材料になる。千草の「まるで霊感」のような感覚に悩む姿は期待を抱かせるものだった。その後は千草の相談相手として、また時に情報源として定期的に連絡を取っていた。
知り合ってからの2年間だけに限ると、千草の予知に関する能力は非常に高いものを持っている。
特に中越地震と秋葉原の通り魔事件の際にはかなり強い反応を示した。しかし、地震の時は「大火事」と予知し、通り魔は「爆弾の爆発」と予知した。彼女に見える抽象的な色が何を指し示すかについて、まだ正確に判断することができないからなのだろう。
現状で、彼女の能力を「予知」として多くの人の行動指針にするにはあまりに未熟で、危険と判断する方が賢明であろう。
それを踏まえて聞いてほしいのだが、千草が年明けの来年3月までに人の心を暗くする大きな出来事を予知をしている。人為的な事件、事故か自然災害かの判断はついていない。本人が言うには「事件のような気がする」とのことだ。
これまでのパターンではXデーが近づくと、また違う反応が出てくる。もう少し詳しい予知はその時まで待たねばならないだろう。
彼女についてのエピソードは、今回はここまでにする。ただ、これは私の単なる期待かそれとも予知? だが、また皆さんの前で千草の話をする日はそう遠くないような気がするのだ。