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「渋井哲也の気ままに朝帰り」 「キャバクラ嬢は社会を知らない」に憤慨した心情は?

 21歳の女子2人と飲んでいると、1人の女子が「キャバクラに行きたい」と言い出したの、知り合いのキャバクラの店員に電話をして、女性2人を無料にしてもらい、3人で店に行ったのです。女子2人は、経験豊富なキャバクラ嬢たちに接待されたのが楽しかったようだった。

 そんなことがあった数日後の、2月4日深夜のテレビ朝日「朝まで生テレビ」を見ていました。テーマは「激論! 日本は本当にダメな国なのか?!」でした。同番組の公式サイトには、「大学生の就職難、雇用問題、デフレ不況、将来不安、13年連続の自殺3万人越え」といった、いま日本が抱えている、マイナスイメージを並び立てていました。

 その出演者の中に、元ライブドア社長の堀江貴文さんがいた。堀江さんは、最初から最後まで、熱のこもった議論を展開して、感情的になり、いら立っていたのです。もちろん、それは、議論の進め方が堀江さんにとって、古いものだったというのもあるかもしれません。

 私が最も気になったのは、堀江さんが、評論家で、JET日本語学校理事長の金美齢さんに対して、「あんたよりキャバ嬢のほうがよっぽど世の中知ってるよ」と吐き捨てるように言った場面でした。どういうやり取りだったのでしょうか。

 金さん「元キャバクラ嬢が出馬したってマスコミが騒ぎすぎて、元キャバクラ嬢なんかが国会議員になってしまったのが問題」

 堀江さん「別にキャバックラ嬢が出馬したっていいじゃないですか。キャバ嬢だから無能ってのは偏見ですよ」

 金さん「差別じゃなく、税金で国を動かす立場にふさわしくない、と言っているだけ」

 堀江さん「あなたより、よっぽどキャバ嬢のほうが世の中のこと知ってるよ」

 金さん「私よりキャバクラ嬢のほうが上なんてことは断じてない。今のあなたの発言は間違いです」

 たしか、こんなやりとりだった。このやりとりに対して、出演していた、ジャーナリストの津田大介さんがtwitterで「ここで朝生見ている現役キャバ嬢がツイッターで参加してきたら面白いのに」とつぶやいた。私も、「半分同意。知っている社会がある、ってのが正しいんじゃないか? 自由報道協会の会見でただしてみるか」と書き込みをした。

 自由報道協会というのは、フリーランスのジャーナリスト、フリーライター、編集者たちが中心となって、共同取材の場を作ろうとしている団体ですが、現在はまだ準備会です。私も準備会のメンバーに入っています。定期的に、誰かに共同でインタビュー、もしくは記者会見することになっています。2月7日には、堀江さんの共同インタビューがありましたので、朝生の件を聞く機会があったのです。

 共同インタビューでは、ほとんどの人が、政治や経済の話しを質問する中で、私がキャバクラの件を質問するということで、ちょっと浮いてしまったかもしれません。

 −− 堀江さんは感情的反発をして、『あんたよりも知ってるよ』と言った場面があったが、あのときの心情は?

 堀江さん「金さんのほうはいきなり、特定のキャバクラ出身の議員を名指して批判していた。一応、民意で選ばれた政治家だ。そもそもキャバクラ嬢が社会を知らないかといえばけっこう知っていたりする。むしろ普通の一般社会の人よりも逆に社会経験が豊富なんじゃないかと思っちゃうぐらい。キャバクラ嬢の方とお知り合いも多いので、私も分かっているわけですよ。彼女らと話しをして、そう思った。
 金さんは多分、キャバクラ嬢は卑しい職業だと思っている。明らかに失礼な発言だ。僕は職業に貴賎はないと思っているので、僕自身も憤慨した。『あなたが言っていることはちょっとおかしいよ』と言えばよかった。金さんとキャバクラ出身の議員の社会経験がどれくらいかは客観的にわからないけど、たいして変わらないと思うんですよね。(金さんの発言は)差別発言だと思いますよ」

 もちろん、大衆店を利用する私が接するキャバクラ嬢と、高級店を利用していると思われる堀江さんが接するキャバクラ嬢とは、ちょっと質が違っていると思う。

 しかし、どんなキャバクラ嬢だって、いろいろな社会経験をし、苦労をしている。中には、貧困層からの逆転を狙って一生懸命な人もいる。「金さん発言はおかしいな」と思っていた私の質問に対する堀江さんの答えは、清々しいものでした。

<プロフィール>
渋井哲也(しぶい てつや)フリーライター。ノンフィクション作家。栃木県生まれ。若者の生きづらさ(自殺、自傷、依存など)をテーマに取材するほか、ケータイ・ネット利用、教育、サブカルチャー、性、風俗、キャバクラなどに関心を持つ。近刊に「実録・闇サイト事件簿」(幻冬舎新書)や「解決!学校クレーム “理不尽”保護者の実態と対応実践」(河出書房新社)。他に、「明日、自殺しませんか 男女7人ネット心中」(幻冬舎文庫)、「ウェブ恋愛」(ちくま新書)、「学校裏サイト」(晋遊舎新書)など。

【記事提供】キャフー http://www.kyahoo.jp/

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