熊本大会では19日、リブワーク藤崎台球場で行われた試合で、観客34人が熱中症で救急搬送された。当日、熊本市の気温は37.3度と殺人的な暑さで、日陰に避難できない観客が倒れるのは、ほぼ必然的な状況だった。
熱中症の危険がある中、客席での応援を強要するのは命に関わるだけに、全校での応援を止めるよう指導するのは当然の措置だが、あくまでも全校応援をやめさせただけだ。ブラスバンドやチアリーダーなどは球場に駆けつけると思われるだけに、「有効な対策にならないのではないか」との声も根強い。
また、一部ネットユーザーからは「熱中症で観客が倒れるなか、試合をさせるのはおかしい」「大会自体を自粛すべきだ」「試合を止めなければなんの意味もない」との声も。このような指摘に対し熊本県高校野球連盟の理事長は、「大会実施規則にしたがい開催した。選手は倒れていないので試合を中止するかどうかの判断にはならなかった」などと説明している。観客はともかく、「選手が熱中症で倒れない限り、試合は続ける」という見解を示した。
なお大会を主催する朝日新聞社と日本高等学校野球連盟も、予選を主催する各都道府県高野連に対し熱中症対策を万全にするよう呼びかけている。既に山梨では、5回、7回終了時に5分間休養時間を設け、水分補給が十分に済むまでは選手をグランドに出さないようにしている。
また、滋賀県では熱中症対策として21、22日の試合を比較的気温の低い午前中に開始することにし、準々決勝を4日間に分ける方針を発表。いち早く対策を取り入れた形となる。
朝日新聞社と高野連は、地方大会で理学療法士が客席最前列に座り様子をチェックし、スポーツドリンクや氷のう、体温計、血圧計などを用意し、万全の体制で臨むと発表している。理学療法士が熱中症で倒れる可能性も否定できないが…。
一定の対策をしている高野連だが、それでも観客は熱中症で倒れているのが現状。特に観客は高野連の対応を見る限り「自己責任で対応するべき」との考えが強いようで、対策も結局「水分補給を促す」のみ。今回の「全校応援自粛要請」も、「応援を強要するな。観戦して倒れてもいいなら球場に来い」という趣旨にも取れる。
そして、試合については「どんなに暑かろうとも選手が倒れない限り試合は中止しない」という方針を貫く様子だ。倒れる前に対策を講じるのが運営者の仕事のようにも思えるが、日本の高校野球の基本的な精神は「倒れたら試合を止める」ということのようだ。
これから高校野球を観戦に訪れる予定がある人は、熱中症対策を十分にしてもらいたい。