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永田町血風録 世襲議員たちには逆風の時代に

 総務省自治行政局選挙部政治資金課によると、政治資金規正法には「相続」の定めがない。だから、仮に政治資金管理団体そのものを子息に継がせても相続税はかからない、ということになる。また、子息が政治家になり、そこへ資金を移す場合も政治団体間での寄付金は年間5千万円まで認められ、それにも税金はかからない。

 今、話題になっている「世襲議員」は、地盤(後援会)、看板(知名度)、そしてカバン(資金)を引き継ぐ。とくに非課税であるカバンをそっくり引き継ぐことができるのは、なにより心強い選挙への援軍になる。
 麻生内閣の閣僚17人のうち11人、衆院議員ではその3分の1は父や祖父からバトンタッチされた世襲議員である。それも一番多いのは言うまでもなく自民党である。
 「父親の後援会があったことは、ものすごく得をしました。自分で後援会を作れば時間とカネがかかりますから」(自民党のある世襲議員)。地盤からカバンまで、ソックリ受け継いだほうが政治活動をするには、これほど楽なことはないわけだ。

 民主党は次期衆院総選挙のマニフェスト(政権公約)に、世襲の制限を盛り込むことを決めた。自民党も若手有志で作る党改革に関する政策グループが4月、党内で世襲制度の旗振り役になっている菅義偉選対副委員長を招いて会合を開いた。約30人がこの会合に出席し、世襲とそうでない立場では選挙そのものが違うという意見が出た。次期衆院選からの立候補制限ということになれば、「職業選択の自由」を盾にした強硬反論もあったという。
 しかし、自民党の改革実行本部は今回の衆院総選挙に世襲議員の制限は盛り込まず、その次の総選挙にそれを適用することを決めた。いつもどおりの迷走であり、既得権には弱腰だったことになる。
 民主党が打ち出すマニフェストには世襲議員の禁止を盛り込むだけにとどまらず、同一選挙区での連続立候補の制限対象となる世襲の範囲を甥や姪などの「三親等内」にすることを掲げている。この民主党案に自民党は真っ向から対立することになった。公共事業が削減されている中で、これまでのような「利益誘導」は確実に減って、そのパイプが細る一方であるのも、自民党候補にはつらい。
 世襲議員だからこそ可能だったであろう、長期的利権もこれまでのようには求められない時代になった。
 そして、利権のおこぼれが期待できた有力な支援者も世襲議員を支えるメリットそのものが減ってきていることになる。
 3世の首相・麻生と4世の民主党代表・鳩山由紀夫の対決は別の角度からも注目したい。
 ご愛読ありがとうございました。(文中敬称略・おわり)

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