長野に代わって一軍に昇格したのが、プロ入り23年目の大道典嘉(40)だ。「プレッシャーのかかるここ一番は、修羅場をくぐり抜けてきたベテランが頼りになる」というのは球界の常識だし、右の切り札的な代打として起用するのだろう。それはいいが、なぜ代わりに長野を二軍に落とす必要があるのか。降格要員は他にいくらでもいるだろう。
不可解な原人事に巨人OBがズバリと切り込む。「長野はドラフト1位として、期待以上の活躍をしてきた。これからがペナントレースの正念場で、長野にとって、一番貴重な体験ができる時だ。なぜそんな重要な時期に二軍に落としてしまうのか。ワケがわからない。チームに危機感を植え付けるためとか、もっともらしい理由をつけるのだろうが、全くピント外れだ。原流の危機管理は、言いやすい、扱いやすい選手に厳しくするだけで、ラミレスや小笠原といった主力には何も物が言えない」。
確かに指摘する通りで、投手陣でやり玉に挙がるのは、いつも内海だ。「論外だ」と酷評したりして言いたい放題だ。昨年も開幕前のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表、サムライジャパンに抜てきしたのに、シーズンに入り期待を裏切ったと激怒。「ニセ侍」発言をして、物議を醸している。
「原の良さは選手の欠点をあげつらわず、長所を伸ばすところにあったのに、昨年WBCで世界一、7年ぶりの日本一奪回で大監督扱いされて、何か勘違いしている。選手を酷評して人気を呼んだノムさん(野村克也氏=現楽天名誉監督)の物まねでもしているんじゃないか」。球界大物OBの1人はこう一刀両断する。
V9戦士だった巨人OBが、川上哲治監督を引き合いに出して、さらに具体的に原流管理の問題点を明かす。「川上さんがミーティングで、あえて長嶋さんを名指しで叱ってチームを引き締めたのは有名な話だし、主力に厳しくしてこそ意味がある。ヤクルト戦でまずい守備を見せたラミレスや、小笠原がミスしたときに厳しく注意してこそ効果がある」。
お説ごもっともで、巨人・渡辺恒雄球団会長から「V9超えのV10」指令を出されている原監督とすれば、V9監督・川上氏を目標にする必要があるだろう。が、V9超えどころではなく、リーグ4連覇が大危機を迎えている原監督とすれば、そんな余裕はないかもしれない。手近で物の言いやすい選手に当たり散らすしか、ストレスを解消する方法がないのか。
が、首位に立つ相手は転んでもただでは起きない、したたかな中日・落合博満監督だ。浮き足立てば、足元を見られ、すくわれる。長野の二軍落ちを知って、ニンマリしているのではないか。