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タカタ“リコール破綻”連鎖国産自動車メーカー存亡危機!

 タカタの“殺人エアバッグ”騒動が、ついに全米で過去最大となる3400万台のリコール(回収・無償修理)に発展した。問題発覚から7年、タカタは「原因が明らかでない」として責任を明確にして来なかったが、米当局の強い締め付けからアッサリとひれ伏し“白旗”を掲げたのである。
 これだけの規模のリコールを一度に行うのは、米国の長い歴史の中でも過去最大。何せ米国内で2年間に販売する新車全体に匹敵するボリュームだ。
 タカタにとって悩ましいのは、欠陥を認めた結果、リコールが全世界に波及しかねないこと。その数、ざっと6000万台。加えてリコールに関わる集団訴訟が北米で既に70件も起きており、今回米当局の圧力に屈してエアバッグの欠陥を認めたことで、訴訟がイモヅル式に拡大する恐れがある。市場関係者が“リコール破綻”という最悪のシナリオを懸念するのは、実はそのためだ。

 同社のエアバッグは作動時に異常破裂して金属片が運転手などに突き刺さり、これまでに世界で6人の死者を含め100人を超す死傷者が確認されている。ところがタカタは「高温多湿な環境に長年さらされたことが不具合の理由」とみなし、寒冷地を含む全米でのリコールには消極的だった。これに業を煮やしたタカタ製品を扱う自動車メーカーが、原因の調査を兼ねた『調査リコール』を実施、同社はこれに協力するスタンスを取ってきた。この期に及んでの方針転換の裏には何があるのか。
 「米国の運輸当局はタカタが原因究明に向けた調査に非協力的だとして、2月から1日当たり約170万円の制裁金を科す一方、日本の国土交通省にタカタの締め付けを要求した。タカタにしても外部に依頼した原因の解明に手間取っており、このまま放置するとユーザーの不信感が高まって業績を直撃する。そこを見抜いた米運輸当局の強力な突き上げで全米リコールを受け入れたのです」(経済記者)

 今、世間の関心はタカタの費用負担がどこまで膨らむか、もっと言えば“リコール破綻”の有無に移っている。そもそも同社が全米リコールに消極的だったのは「下手すると債務超過に陥り、金融支援を仰ぐ最悪の事態もあり得るため」(金融筋)に他ならない。
 今年の3月期、タカタはエアバッグ約650万個のリコール費用として556億円の特別損失を計上し、295億円の最終赤字に転落した。しかし、この中には今回追加されたリコール分や自動車メーカーによる自主的なリコール費用は含まれていない。むろん、現時点で自動車メーカーの負担になっているリコール費用は、メーカーによほどの落ち度がない限り、結局はタカタに回ってくる。その総額、市場関係者は「2500〜3000億円に達する可能性がある」と試算する。
 これに対し、タカタの自己資本は今年3月期で1472億円にすぎない。もし関係者の試算通りならば債務超過、即ち破綻地獄に転落する。

 たとえ米国での“リコール破綻”が避けられたとしても、前述したように世界では今後6000万台を超える“リコール・ラッシュ”が現実味を増す。追い打ちをかけるように欠陥エアバッグをめぐって集団訴訟が相次いでおり、その数は現時点では70件余りだが、タカタが今回、欠陥を認めたことで集団訴訟が勢いづくのは確実。これが世界的規模で拡大すれば、いよいよもって地獄のどん底へ突き進む。
 何せ訴訟額はハンパじゃない。タカタは3月末、同社と米国子会社2社がカナダの消費者から3件の集団訴訟を提起されたと発表した。請求額は「一般的賠償及び懲罰的賠償」を含め総額2288億円。これは原告の請求額で実際に裁判所で確定した金額ではないとはいえ、この手の訴訟ラッシュに見舞われれば会社の存亡が危うくなるのは明らかだ。

 「最大の懸念はそこにある」と自動車業界を担当する外資系証券アナリストが顔を曇らせる。破綻の事態を回避させるべく、取引先や銀行がタカタ支援に乗り出すにせよ限度がある。もしタカタが本当に白旗を掲げてギブアップ宣言すれば、どんな事態に直面するかだ。アナリストが続ける。
 「トヨタやホンダにしても、今はタカタへの“つけ回し”ができるから調査リコールに応じている。その手前、タカタ延命には応分の協力を惜しまないでしょうが、尻に火が付けば“無理心中”覚悟で支援するとは思えない。とはいえタカタと関係が深いホンダなどは連名で訴訟を起こされている。これでタカタが破綻し、ホンダやトヨタが逃げ足を速めれば、日本の自動車メーカーへの信頼が根本から揺らぎかねません」
 そんな驚愕のシナリオに身震いしているのは、案外トヨタやホンダの方かもしれないのだ。

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