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本好きオヤジの幸せ本棚(34)

◎オヤジ人生にプラス1のこの1冊
『スタート!』(中山七里/光文社 1575円)

 小説の中で別の芸術ジャンルを題材にして書く試みは、作家にとってかなり難易度の高い挑戦だろう。文章で表現し切れないものを形に残すため画家は絵を描き、音楽家は作曲をする。つまり、本来であれば文章ではないものをあえて文章の枠組みに入れるという、手間のかかることをしなければいけないのだ。ではあるけれど、読む側としては大歓迎の試みだ。言葉は取り上げる素材を客観化し、その魅力を細かに人に伝えるには最適のツールなのだから。
 中山七里は『このミステリーがすごい!』大賞受賞作『さよならドビュッシー』を2010年に刊行してデビューした。火災被害に遭い不自由な身体になった少女が、不屈の精神でピアニストになる夢を追い続ける本作は、とにかく演奏シーンの迫力が凄まじい。
 そしてこのたび『スタート!』で作者が新たに挑んだのは映画である。助監督という立場になってから久しい映一は張り切っていた。恩師の大森監督が新作を撮ることになった。現場に参加できるだけで幸せだ。ところが待っていたのは撮影中の事故の連続。何者かのたくらみを感じる映一だが…。
 デビュー作と同様、作者は扱う素材について徹底的に調べている。映画業界がどのようなものか描くのみならず、映像を文章で再現した。いわゆるジャンル・ミックスを理想的な形で成し遂げた傑作だ。
(中辻理夫/文芸評論家)

◎気になる新刊
『なるほど知図帳 世界2013』(昭文社出版編集部/1680円)

 詳細な世界地図帳に、産業経済、国際情勢、社会、文化、スポーツなどの特集をプラスした“情報系”世界地図帳の2013年版。欧州危機、領有権問題、資源、イスラム世界…。激変するグローバル社会を読み解く知的好奇心満載の1冊。

◎ゆくりなき雑誌との出会いこそ幸せなり

 シニア世代には、「リタイア後の生活」が大切なテーマとなっている。なかでも「旅」への需要は高く、テレビや雑誌などメディアでも取り上げられることが多い。そこで紹介したいのが『ノジュール』(JTBパブリッシング/1号につき750円)だ。年間購読の通販専門の雑誌で、書店では販売されていない。
 最新号の特集は、「おトクな贅沢列車と夜汽車の旅」。希少な存在となった夜行列車をはじめ、車内やグルメなどの工夫が楽しいおもしろ列車、とびきりの絶景ルートを行く展望列車など、“贅沢”が味わえる鉄道旅を特集している。旅行代理店の関連出版社が編集・発行するだけあって、お得な鉄道利用プランなど、実用情報の量と緻密さは折り紙付きだ。
 冬の時期に合わせた特集とあって、『カシオペア』など北を目指す豪華夜行列車や、新作ぞろいの駅弁ページなど、興味をそそる記事も豊富。大人の旅のプランにぜひ一読を。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)
 ※「ゆくりなき」…「思いがけない」の意

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