落合前監督の解任理由は高額年俸、観客動員減少などが挙げられていた。現実に中日の観客動員は2連覇しながら、10年、11年と2年連続で落ちており、球団経営を考えると、「勝っても客が入らない」と深刻な課題となっている。
そんななか、選手の入れ替わりはどうかというと、左のエースであったチェン・ウェイン投手がメジャーのオリオールズに移籍。小池正晃外野手はFAで古巣・横浜DeNAに復帰、谷繁元信の控えだった小山桂司捕手を金銭で楽天に放出した。一方、入団組はドラフトで高校生(東海大甲府)の高橋周平内野手(18)を1位指名するなど、即戦力より将来を見据えた補強を優先。トレードでの新戦力獲得はなかった。新外国人は投手、外野手の2人のドミニカンをテストした上で合否を決める。
賛否両論渦巻いたのが、楽天を自由契約となったOBの山崎武司内野手(43)の獲得。推定年俸は3000万円+出来高で、球団にリスクはないが、観客動員アップのための営業優先の補強ともいわれている。かつては、本塁打王を2度獲った強打者も、昨季は11本塁打、48打点、打率.229と衰えは隠せず。同じポジションの一塁には09年の本塁打、打点の2冠王のトニ・ブランコ内野手(31)が控えている。山崎はレギュラー獲りを宣言しているが、セ・リーグには指名打者制度もなく、代打要員に終わる可能性も高い。
さらに脅かされたのが、元エース川上憲伸投手(36)の緊急獲得だ。川上はFA権を行使してメジャーのブレーブスと3年契約。09年には7勝を挙げたが、10年はわずか1勝に終わり、昨季は右肩の故障のため登板0。メジャーでの成績は8勝22敗と散々な結果に終わった。ブレーブスとの契約が満了し、移籍先を探していた川上が自ら古巣にアプローチして4年ぶりに中日に復帰した。こちらも、推定年俸は3000万円+出来高で、球団のリスクは低い。川上本人は「右肩は大丈夫」と語っており、チームもローテーションに入ることを期待しているようだが、実際のところ、肩はもうボロボロで、峠を越えた選手との評価も少なくない。
そして、メジャーのインディアンスからFAとなり、今季の所属先がまだ決まっていない大物OBの福留孝介外野手(34)にも、食指を動かしているとのウワサもあり、こちらの動向にも目が離せない。
確かに、かつてのスター選手が帰ってきたことで、営業面でプラスになる計算は立つだろう。しかし、結果より昔の名前に頼った選手起用をしたら、中日にリーグ優勝への道はないだろう。時代に逆行した補強は、3連覇より観客動員アップのためといわれても仕方あるまい。
(落合一郎)