「私は元々、癇癪を起こしやすい性格というか、頭に血が上ると自分でも止められないんですよね。電車で痴漢にあった時も、だまっていることができず、相手の腕を掴んで怒鳴ってしまいますから」
そんな恵子は1年ほど前から都内のキャバクラで働き始めた。彼女にとって接客に関してはそれほど難しいものではなかったが、一部、態度の悪い客に対しては苦労していたと話す。
「説教や多少の暴言を吐いてくる客にはなんとか我慢することができました。でも私が一番許せなかったのは、体を触ってくる客ですね。1度の注意で聞き入れる人ならば、許していたのですが、何度注意しても手を出してくる客にはさすがに堪忍袋の尾が切れて、手を上げてしまったんです」
恵子は客に胸を触られた瞬間、全力で平手打ちしてしまったという。その後、客は激怒し、店長が謝罪。彼女は決して謝ることはなかったが後日、罰金として店から2万円の支払いを命じられたという。
「客が悪いのになぜ私が払わなきゃいけないんだろうと思いましたね。客をわいせつ行為で訴えようかと思ったりもしたんですが、さすがにめんどくさいのでやめました。でもまたいつかそんな客の相手をしなければならないんだと思ったら、キャバで働くことが嫌になり、足を洗うことを決めたんです」
接客中、多少の猥褻行為を受け入れなければならないという考えに賛同できなかった恵子。彼女はキャバクラを辞め、現在はアパレル系ショップ店員として都内で働いているという。
(文・佐々木栄蔵)