武智一夫調教師(72)が31日付での勇退を発表した。騎手を経て70年3月に調教師免許を取得。重賞はトラストホークで1982年東京記念、東京大賞典、83年帝王賞を。タカシマリーガルで85年青雲賞を制した。通算成績は5497戦507勝を誇る。
16歳のときに山口県宇部競馬でデビューしたが、53年の廃止に伴い大井へ。変わりゆく時代に翻弄されながら、地方競馬をつぶさに見てきた。「騎手時代の一番の思い出は、浦和のゴールドCで21馬身ぶっち切って勝ったこと。調教師としては、やっぱりハナ差で勝ったトラストホークの東京大賞典だね。ゴール時に勝ったと思ったけど、写真判定の線1本の差だったから」。56年間の競馬人生。思い出は尽きない。
表舞台を去っても「アドバイスがほしい人にはいつでも門戸を開く」と言う。特に、「技術」にはこだわりがある。現在は伸縮性のあるテープを馬の脚に巻くバンテージも、ひと昔前のそれは木綿の布で保護する「ばん術」といわれていた。
「今はテープである程度簡単に巻けるようになったけど、まだまだ技術が未熟な者が多い。治すのも壊すのもこれ次第。“キモ”だよね。ムダワラとか今はあまりかけないけど、昔からの技術ってのはやっぱり大事」
自身も宇部競馬時代からの先輩で、船橋の調教師会会長も務めた故・矢熊壽師に技術を叩き込まれた。次男の武智政師を含め、後進には「伝統的な技と新しいものを合わせ、競馬の発展に尽くして」とアドバイス。これからも“競馬愛”は不変だ。