心斎橋の大丸は1933年に完成。長きにわたり心斎橋の顔として親しまれてきた。しかし、老朽化にともなう安全性への不安も高まっており、運営する『J.フロントリテイリング』は、今春発表した中期経営計画の中に「心斎橋地区再開発計画の具体化」として、本館の建て替えを盛り込んでいた。しかしこれはあくまで計画に過ぎず、具体化は来春以降という見方がもっぱらだった。
「それがここへきて、“建て替え正式決定”が年内にも発表されるという話。本社の広報はこの点について明言を避けていますが、外商の社員があちこちで“取り壊し確定”のアナウンスをしているのです」(某広告代理店の百貨店担当)
事態が動き出した理由は「梅田新本店を成功させた阪急、あべのハルカスをオープンさせた近鉄への対抗心」(前出・担当者)や「売り上げ低迷を考えて、企業としての体力があるうちに」(大丸OB)といった話が聞こえてくるが、地元からはこんな声も上がっているのだ。
「大丸は古き良き大阪のシンボルや。それが今風の感じのもんに変わったら、心斎橋自体のイメージが変わってしまう可能性がある。建て替えるなら建て替えるで、内も外も今のイメージを尊重してほしい。間違っても店内に免税店なんか作ってほしないわ」(心斎橋筋商店会関係者)
心斎橋筋を南へ下りた戎橋、道頓堀一帯は、今や外国人観光客で溢れ活気はあるものの、“大阪情緒”に変化が起きつつある。“大阪の文化財”との呼び声高い大丸心斎橋店本館も、その流れに呑み込まれてしまうのか。