そこで、時系列比較ができる総務省の「労働力調査」で見ると、昨年の非正社員比率は37%とやや低いが、非正社員の比率が一貫して上昇してきていることに、変わりはない。
非正社員比率が上昇してきているのは、もともと非正社員の比率が高い女性が労働市場に進出しているからだという見方もある。ただ、男女別に見ても非正社員の比率は上昇しているし、もっと興味深いのは、正社員を実数で見たときの結果だ。
女性の正社員数のピークは、'97年の1172万人だった。それが今年は1015万人と、157万人も減少している。政府は「女性が輝く社会を作る」と言いながら、増えているのは非正社員ばかりで、正社員は減っているのだ。
男性の場合も、正社員数のピークは'97年で、2639万人だった。それ以降は、ほぼ一貫して減少して、今年は2251万人と、何と388万人も減少しているのだ(各年2月の数字)。男女合計で545万人もの正社員雇用が失われている。
なぜ、こんなことが起きているのか。「就業形態の多様化に関する総合実態調査」では、非正社員を活用する理由を企業に聞いているが、「賃金の節約のため」とする事業所が38.6%と最多になっている。つまり、企業が非正社員を使う理由の第一は、低賃金なのだ。
それにしても、企業はどうして正社員を減らし、非正社員を増やすようになったのか。それは'97年から正社員の減少が始まったことを考えれば明白だ。この年、消費税率が3%から5%へ引き上げられ、日本経済が15年にわたる長期デフレに突入した。この時期には、デフレで企業の売り上げが鈍り、賃金の支払いが苦しくなった企業がボーナスを減らし、その結果、所得の落ちた消費者が消費を抑制する。すると、また企業の売り上げが落ちるという「デフレスパイラル」が発生したと言われる。
しかし、デフレスパイラルには、もう一つの経路があったことになる。それは、企業がリストラで減らした正社員を非正社員で置き換えることによって生じる所得の減少だ。非正社員の給料は正社員のおよそ半額だから、置き換えるだけで所得が半減するのだ。
もちろん、非正社員のなかには、自らの意思で選んでいる人も多い。だから、非正社員の増加にともなうデフレ圧力をなくすためには、正社員と非正社員の時給の格差をなくす「同一労働同一賃金」を徹底すればよいのだ。それは、世界の常識でもあるし、ILO(国際労働機関)も、基本的人権の一つとして認めている。
ところが今年9月、民主、生活、維新の野党3党が共同提出した「同一労働同一賃金推進法」が、「均衡を考慮」という表現で骨抜きにされたうえで成立してしまった。結局、格差拡大は国会や政府が意図的に起こしているのだ。