やはり、最後は騎手の“レース相性”が勝負を分けた。もちろん、初めてのGI戴冠を欲する騎手と、3年連続で同レース連対中(うち2勝)の騎手との精神状態の違いもあった。
ベッラレイア=秋山騎手にとって、1番人気というのは想定外だったに違いない。皮肉にも、2冠確実といわれたダイワスカーレットが直前で熱発のため回避したことが、自分自身へのプレッシャーを増幅させる要因となってしまった。レース後、「勝ったと思ったんだけど…」とは秋山騎手。その硬い表情に、諦念(ていねん)にも似た心情が読み取れた。
確かに、3年連続オークス連対中のジョッキーに後方からにらまれたら、早めに仕掛けざるを得ない。しかし、結果論とはいえ、府中の長い直線でいち早く動いてしまうことは、他の騎手に「しめしめ」と舌なめずりをされることを、すなわち意味する。
そのベッラレイアを徹底的にマークしていたのが福永騎手だった。「ベッラレイアを見ながらの競馬。まあ、前が詰まったので、どうさばくかだけだったけどね」と、秋山騎手とは対照的な余裕の表情。直線残り約300mで前があかない不利も何のその、瞬時に進路を外に変更し、最後はベッラレイアを計ったように差し切った。
「これで真のオークス男の誕生ですね」。4年連続で連対(3勝)されては、その言葉にただうなずくしかない。
一方、福永騎手のオークス相性の良さは評価できても、ローブデコルテの勝利自体には正直、価値は求めづらい。2歳女王ウオッカ、桜の女王ダイワスカーレットの2大女王が不在。1勝馬が5頭も出走。史上まれに見る低レベルなメンバーだったことは疑いようのない事実。真価を問われるのはその2頭を倒してから…というのが衆目の一致する見解だろう。
そして、ローブデコルテはこれが8戦目。今後は海外遠征も視野に入れているという。いかにも早熟っぽい血統構成から、2大女王がドンと構える秋まで、果たして力を保てるのか?今年の樫の女王は例年にない厳しい目線を向けられることになる。