言葉の主はアンライバルドを送り出す友道厩舎の杉村助手だ。「19歳にこの世界に入ってもう30年が経つのか」。長くもあり、短くもあった馬乗り人生でめぐり合った名馬はスピードヒーロー、クロフネ、タニノギムレット、アドマイヤジュピタ等々、数知れず。あの名伯楽と称された伊藤雄二・元調教師をもうならせる調教理論と、抜群の運動神経のもと、精密機械のように予定したハロンラップを正確に刻む非凡な騎乗技術は栗東トレセン内でも異彩を放っている。
その仕事人が、今回、愛馬が2冠を目指すにあたり、調教メニューも皐月賞当時とは違う工夫を凝らしている。
「若駒Sから皐月賞までの2カ月間は坂路で54〜55秒前後を1本と、下でのコース追いを1本。小回りの中山に対応する瞬発力をつける内容だったが、今回はコースが主体。長めをゆったりと乗って息をつくり、直線まで我慢させる追い切りをやってきた」。まさしく、これぞ“ダービー仕様”。アンライバルドも陣営の期待に応えるように、「今ではアドマイヤジュピタが天皇賞(春)を勝ったときぐらいの調教量を平気でこなすようになった」と心身ともにさらなる進化を遂げている。
「ギムレットにもまたがったことはあるが、あの馬はピンポイント騎乗だった。でも、この馬は入厩当初からずっと調教をつけてきたからな。ホント、オレの魂がこもった仕上げ。皐月賞は3番人気で勝ったけど、オレ自身は1番人気でダービーを勝ちたい。怖い馬? 相手はどれかと聞かれたら答えられるが、怖い馬なんかいない。このチャンスは絶対に逃さない。オレらがやってきたことが合っていたら、結果は自ずと出る!」
アプレザンレーヴ、セイウンワンダーを堂々と従え、皐月賞馬アンライバルドが第76回日本ダービーを勝つ!