思い起こせばトライアル真っ盛りの昨早春。アドマイヤムーン、キッス等を擁し、牡、牝ともどもクラシック戦線に向けて“我が世の春”を謳歌していた松田博厩舎。その中で、「ゴトゴトした歩様に、みすぼらしい馬体はまるでロバみたい。100人中、どの調教師が見たってこの馬が走るとは思わんで」と豪放磊落(らいらく)な師が、みにくいアヒルを思わす口調で苦笑を浮かべていたのがドリームパスポートだった。
しかし、重なり合う乗り役の調整や、僚馬とのレース選択の兼ね合いにおいて、もっともシワ寄せを食いながらもクラシック3冠では皐月賞2着→ダービー3着→菊花賞2着。さらにディープをはじめとする歴戦の古馬を相手に、ジャパンC2着、有馬記念4着と2006年を突っ走り、大車輪の活躍を収めたのが、誰であろう、このパスポートであった。
「昨年の秋からトモに肉がついてきて、まるで別馬に変わったし、コース、距離、乗り役、ポン使い等の条件もまったく問わない強い馬。今までの休み明けでは今回が一番やってきた。体もひと回り大きくなったし、すんなり勝つようだと、今年は全部獲れるで」(松田博師)
2007年、ゴールドラッシュの起点は幾多の名勝負を生んだこの阪神大賞典から始まる。