それは「120年に一度しか咲かない」と言われる竹の花だ。花と言っても普通の花とは違った形状で、白く細い稲穂のような小さな房が現れ、風に揺れるものだ。
竹の開花の周期は種類によって違うが、咲くまでの期間はかなり長く、人間の寿命より長く咲かないものもある。またほんの数日で散ってしまうため、咲いたところはめったに見られない。
竹の花が咲くというのは、今年の春ごろから日本各地で報告されていた。俗説として「竹の花が咲くと不吉なことや天変地異が起こる」と言われていた。これだけ竹の花の報告が相次ぐということは、日本を何らかの天変地異が襲うのでは……と噂されている。
果たしてこれは事実なのか。
前述の通り、竹の花が開花する周期は非常に長く、開花するタイミングも解明されていないようだ。だが切られたり、環境の変化などの外的ストレスによって開花することもある。また種類によって違いはあるが、開花の後に地上に出ていた部分は枯れてしまう。
竹は一本一本が独立しているように見えて、地下茎でつながっている。生い茂っている竹やぶ一つがまるごとつながっているケースもあるのだ。それぞれの竹がつながっているせいか、開花が連鎖することもある。一斉開花の引き金となる原因や仕組みはまだ分かっていないが、少なくとも不吉なことが起きるわけではないのは確実なようだ。
しかし過去の記録を振り返ると、1960年代から70年代にかけて国内で栽培されていたマダケが、数年にわたり一斉に開花。その結果、全国的な竹不足が起こったとされている。ということは、これから竹不足になることも考えられるのだ。
容易に加工ができ、タケノコが食料にもなる竹。それが一斉に枯死するというのは、昔の人の生活にとってかなりの打撃だったに違いない。「不吉の前兆」という言い伝えはここにも理由があったのではないだろうか。
(山口敏太郎)