昨今の鉄道ブームを受け、“鉄ちゃん”を告白する人が急増している。まるでジャニーズタレントを追いかけるかのごとく、熱心に車両を撮影する“女子鉄”を見かけることも珍しくない。
なお、ひと口に鉄ちゃんといっても好きなジャンルは人それぞれだ。最も多いのは写真撮影に情熱を燃やす、いわゆる“撮り鉄”と呼ばれる人々であろう。力強く大地を疾走するその姿に憧れるのは日本男児ならば当然のこと。ちなみに女子鉄は若干事情が異なり、車両がかわいいという理由でハマることが多いようだ。彼女たちにしてみれば、鉄道車両はクマのプーさんのような存在なのかもしれない。中には踏み切りや車内チャイムなど、鉄道音を聞くと異様に興奮するというちょっと特殊な人たちも。彼らは走行音だけで車両を判別できるというのだから大したものだ。
さて、撮り鉄に並ぶ代表的な鉄道趣味といえば、鉄道に乗ること、あるいは鉄道に乗って旅することを目的とする“乗り鉄”であろう。数多くいる乗り鉄の中でも、2005年にJR・私鉄全駅下車という偉業を成し遂げ、「乗り鉄界のカリスマ」と呼ばれる男がいる。男の名は横見浩彦。
日本は世界で有数の鉄道王国であり、全路線を乗車するだけでも大変な時間と労力を要するのは想像に難くない。しかし横見氏の場合は全路線に乗った上、すべての駅に下車。時には周辺の名所散策までこなす。「田舎駅なんかだと1本逃すと次に何時間も来ないとかよくありますよ。たいていは駅員もいなくて1人でポツンと待つハメになりますね」と苦労話を聞かせてくれた横見氏。全駅下車は孤独との戦いでもあるのだ。
その彼が、今年8月22日、滋賀県の近江鉄道・ひこね芹川駅にて、ついに前人未到の1万駅下車を達成。当日は大記録達成の瞬間を見届けようと、全国各地から鉄道ファンが大挙して押しかけた。
12時22分。大勢の鉄道ファンでぎっしりと埋め尽くされたまだ真新しいホームは、カリスマ横見が降り立つと、その偉業を讃える大きな拍手と大歓声に包まれた。横見氏は「これだけの人が集まってくれて本当にありがたい」と素直に喜んだ上で、「鉄道が好きって言えることが当たり前になりつつあるのかな」と、鉄道ファンに対する偏見がなくなりつつある現状を感じ取り、目を細めてみせた。
全駅下車・1万駅下車に続く次の目標を、「この瞬間にも駅はできている。新しい駅があれば必ず下車に挑戦します。待っていてください」と語った横見氏。既に1万1駅目の下車も済ませたという。そこに駅がある限り、横見浩彦の旅は終わらない。
<プロフィール>
横見浩彦(よこみ・ひろひこ)トラベルライター。1961年生まれ。2005年2月20日には上信電鉄・上信福島駅にてJR・私鉄全駅下車。2009年8月22日に近江鉄道・ひこね芹川駅にて1万駅下車を達成した。乗り鉄界のカリスマとして、数多くの冠番組を持っている。
「10000駅下車男・横見浩彦の乗り鉄旅」
前人未到の1万駅下車を密着取材。また、乗り鉄の魅力や旅の楽しみ方も紹介する。詳細は旅チャンネルHP http://www.tabi-ch.net/ まで。
初回放送
9月11日(金)23時
リピート放送
9月15日(火)18時
9月16日(水)11時
9月22日(火)18時
9月25日(金)23時
9月30日(水)11時