巨人大物OBたちからの総スカン。猛虎ファンの襲撃も辞さないような身の危険を感じさせる拒否反応。板挟みになった星野氏と読売首脳は巨人・星野監督誕生をギブアップするしかなくなったのだ。真夏のストーブリーグは、「来季も阪神のシニアディレクターを続投する」という星野氏の続投表明でようやく一件落着している。
一時期、この巨人監督消滅は星野氏にとって“災いを転じて福となす”となりそうだった。07年1月25日、北京五輪日本代表・星野監督が発表された。「偉大なONの後を受けて、自分のような者が日の丸を付けた日本代表監督をやっていいのかと正直に思う。本当に光栄だ」。満面の笑みで星野監督はこう語っている。ONの後継者としての晴れがましい日本代表監督就任の喜びを隠しきれなかったのだろう。
北京五輪日本代表・星野監督を強力に推したのは、巨人・渡辺球団会長だった。前回の真っ正直な巨人・星野監督擁立に失敗した反省からのシナリオ変更が見え隠れしていた。「日の丸を背負った日本代表監督として金メダルを獲得した星野なら、アンチ巨人というカラーは一掃できる。今度は日本球界再生のために巨人監督就任を要請すれば、巨人OB、ファンも正面切っては反対できないだろう」。球界地獄耳の関係者はこう観測していた。
シナリオ通りの展開は12月のアジア予選までだった。フィリピン、韓国、台湾に3連勝して北京五輪本戦出場を決めたからだ。しかし、08年8月の北京五輪本戦は悲惨な結果に終わっている。「金メダル以外はいらない」と星野監督は高らかに宣言していたのに、銅メダル獲得すらできなかったのだ。テレビのワイドショーまでが戦犯・星野監督バッシングを始め、前代未聞の大変な騒動が起こった。星野氏の余計な一言が火に油を注いだからだ。「WBCの監督も頼まれているが、まだ返事をしていない」と漏らしたために、「ふざけるな。銅メダルを取れなかった監督が、連覇を目指すWBC監督なんて冗談じゃないぞ」と、星野批判の嵐が吹き荒れた。
それでも巨人・渡辺球団会長は「北京五輪で負けたが、星野君以上の監督がいるか」とWBCでの日本代表監督続投を支援したが、これまた逆効果になり、世論の総反発をくったのだ。なぜ渡辺球団会長が日本代表・星野監督にこだわり続けたのか。「日本代表監督→巨人監督」というシナリオを捨てきれなかったからだという。
最終的に既定路線だった星野監督案が消滅して緊急代案の日本代表・原監督がWBC連覇を果たし、これで巨人・星野監督も完全に無くなった。常識的にはそう思うが、渡辺球団会長があきらめていないので、まだ火種はくすぶっているという。その一方で万が一の堀内氏の緊急再登板説もささやかれている。堀内氏VS星野氏の再対決はあるのかどうか。