そもそも、オープナーとは昨年、メジャーリーグで流行した変則の投手継投策だ。タンパベイ・レイズのケビン・キャッシュ監督が、リリーフ専門のピッチャーを先発マウンドに送った。先発投手の頭数が慢性的に不足していたからだが、当時40歳と若かったキャッシュ監督は、「メジャーリーグでは初回の防御率がもっとも悪い」というデータにも着目し、「だったら、1イニングを零封することを仕事とするリリーフ投手に初回を任せ、その後、リリーフ投手を総動員してしのげばいい」と思いついたのだ。
この采配が見事に的中し、レイズは57試合もオープナーを使い、シーズンを通して90勝を挙げる好成績も収めた。
「シーズン途中、このオープナー采配を模倣する球団も現れました。オープナー役の救援投手の後に、本来の先発投手が登板する試合もありました」(米国人ライター)
この試合開始の1イニング目からせいぜい2イニングまで、この変則的な投手起用法を、ここまで栗山監督は用いてきた。
4月2日の楽天戦と同6日の西武戦で先発マウンドに加藤貴之(26)を立たせたが、2試合とも2、3回で交代させている。そして、斎藤も4月4日の楽天戦で“オープナー”を務めたが、結果は残せなかった。
「斎藤が二軍調整を終え、20日のロッテ戦から再合流しました。一度、負け試合で投げさせて様子を見て、その結果次第で、再度オープナーとして起用するものと思われます」(スポーツ紙記者)
今季の日本ハムだが、変則的な采配が多い。特定の選手に対し、内野手を外野に走らせて、「外野手4人態勢」にしたこともあれば、極端に守備位置を右方向に寄せるシフトも見せた。日本ハムはメジャーリーグのシステムに敏感な球団でもある。しかし、当の栗山監督は「オープナー」について、こんなことも漏らしていたそうだ。
「もし、そのオープナーが絶好調でパーフェクトに抑えていたら、その時も交代させていいのか?」
斎藤はともかく、加藤は6日の西武戦でヒットこそ打たれたが、無失点に抑えている。同日の試合を落とした敗因だが、3回からマウンドに上った金子弌大が本調子ではなかったからである。野球に「もしも」はないが、加藤をもう少し続投させていたら、試合は違う展開になっていたかもしれない。
勝ち星もつかずにマウンドを下りるオープナーの気持ちに寄り添うところは、栗山監督らしい。しかし、プロ9年目で通算15勝、キャリアハイがルーキーイヤーだった11年の6勝という斎藤を見ると、この先、先発ローテーション入りして活躍するとは思えない。
また、登板準備で肩を作るのが遅いため、救援投手もままならない状況を考えると、オープナーでしか生き残れるのではないだろうか。栗山監督の心配を現実にするくらい、斎藤には頑張ってもらいたい。変則的な采配とは、イマイチな選手を生かす“思いやり”とも言えそうだ。
(スポーツライター・飯山満)