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キャノン本格参入 カメラ業界で勃発した高級ミラーレス戦争

 一眼レフカメラの業界シェアにおいてナンバーワンのキヤノンが今年9月、同社初の高級ミラーレスカメラの発売を発表したことが業界で話題になっている。

 この分野で先行していたのはソニー。そこに一眼レフカメラ2強の一つ、ニコンも今夏、高級ミラーレスカメラの販売を公表し本格参入の意思表明をした。そして、今回のキヤノンだ。上級者向けの一眼レフカメラで競い合ってきたカメラ界の巨人たちが、なぜ、高級ミラーレスカメラに力を入れ始めたのか。

 「業界をけん引してきたコンパクトデジタルカメラ(以下、コンデジ)の売り上げがここ5年に限って低迷し続け、各社頭を抱えていました。そんな中、ミラーレスカメラの売り上げが、急ピッチで伸びてきたため一気に勝負に出たのでしょう」(業界関係者)

 業界団体のカメラ映像機器工業会の統計によると、ここ数年の業界全体の苦境が浮かび上がる。
 同統計によればデジタルカメラの国内メーカーの総出荷台数は、ピーク時の2010年には1億2146万台だった。それが2017年には約2498万台と、6年間で約5分1に激減している。

 売り上げ低迷の背景をカメラメーカー関係者が教えてくれた。
「不振の背景には、性能が年々向上するスマートフォン(以下、スマホ)のカメラにデジタルカメラが食われている実態があります。2010年頃からは、スマホカメラに手振れ補正、ハイビジョン、顔認識など、さまざまな機能が搭載され、一般人がスナップ写真を撮るなら十分な性能です。その上、スマホは撮った写真を即座にSNSに投稿できる便利さもあるので需要が大幅に伸びたのです」

 スマホがカメラ業界を直撃した例では、今年5月、カシオ計算機が業界から撤退を決めたことでも象徴されている。
 カシオは、世界初の液晶付きデジタルカメラを発売するなど、コンデジの草分け的存在でブームをけん引してきた。しかし、カシオのカメラ事業はコンデジに特化していたため急速に業績が悪化。2016年度は5億円の赤字で、2017年度は49億円と、大幅にマイナスを拡大し、撤退を余儀なくされたのだ。

 業界全体が低迷する中、ミラーレスカメラの売り上げだけが好調だ。今年1〜6月の日本国内出荷台数は、29万2269台(前年同期比9.1%増)と増加傾向。同じレンズ交換タイプの一眼レフカメラが24万6150台(前年同期比24・9%減)と、出荷台数でも5万台弱も上回っている。

 そもそもコンデジ、そしてミラーレスカメラと一眼レフカメラは、何が異なるのか。メーカー関係者が解説する。
「コンデジはレンズとボディーが一体化しているカメラ。コンパクトで安価なため、スマホカメラの性能に最も近いと言えるでしょう。それに対し一眼レフとミラーレスはレンズ交換式で、性能はスマホよりも断然高い。仕組みとしては、一眼レフはミラーに反射させた光を利用して映像化させる構造。一方ミラーレスは、その名の通りミラーが存在しないカメラで、画像センサーで光を電気信号に変えて映像化させます。その分、一眼レフよりも小型で軽量です。画質に関しては、ほぼ大差ありません」

 つまり、スマホのカメラで物足りない人たちは一眼レフカメラかミラーレスカメラの購入を検討することになる。
 ハイスペックカメラとしては一眼レフが昔から人気だった。ただ、重くて大きいため、持ち運びが大変。ミラーレスは一眼レフより小さく、カバンに入れて持ち運びもできる。そのためミラーレス人気が高まり、業界全体が低迷する中、1人気を吐いているのだ。
 とはいえ、プロカメラマンやハイアマチュアからはミラーレスの人気は今ひとつだという。その理由をプロ写真家が解説する。

 「ミラーレスは構造的に一眼レフと比べてタイムラグがあるため、シャッターチャンスを逃してしまうんですよ。特にスポーツは刹那の瞬間を捉えなければいけないので、スポーツカメラマンは、一眼レフを使い続けると思います。ただ、最近は技術が進化し、ミラーレスもタイムラグが小さくなってはいます。動かないものを専門に撮るカメラマンの中には、ミラーレスに流れはじめる人も現れ、そこを先行していたソニーが根こそぎ取っていったのです」

 それを見た、キヤノンとニコンが高級ミラーレスに本格参入したのだ。一眼レフとのカニバリゼーションの恐れもあるが、両社とも大きな転換期と見ている節もある。

 今後は高級ミラーレスカメラを軸に競争が激化していくだろう。同時にスマホとのサバイバル戦も壮絶になりそうだ。

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