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失くした物を見つけてくれる神様

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画像はイメージです。

 この話は、某県T市在住のKさんから教えてもらった話だ。

 探しても、どうしても見つからない時、「おやかんさま」にお願いすれば、必ず見つかるといわれる。例えば、免許証や財布を何処かに置き忘れてしまった時、「おやかんさま」にお願いしたら、直ぐに見つかったという話もある。
 この「おやかんさま」とは一体何なのだろうか?
 本来、やかんとは湯沸かしに用いられる道具であるが、やかんの取っ手にひもを結った「おやかんさま」は偉大な能力を発揮する。それは「失せもの」の在り処を人に「気付かせて」くれるというものだ。
 「おやかんさま」については、『牛津歳事記』や『栄冠寺御勤帳』という文献に、その起源や威力の詳細が記されている。

 大正時代代末期、上野の国(群馬県)赤城の山麓・午津にある古刹・栄冠寺の住職が、代々の得意先の大店主から預かった大切な茶つぼをどこかに仕舞い込んで、その在り処を忘れてしまった。寺中が大騒ぎで、見習いの小僧まで総動員して探し回ったが、どこを探しても見つからない。寺を信用して預けてくれた高価な品を無くしたとあっては多額のお布施が貰えなくなってしまう。大店主が法事で寺に来るまでには探し出さねばなかった。

 気の小さい住職はショックで寝込んでしまった。その姿を見兼ねた見習い小僧は、「おやかんさまに頼んでみましょう」と言い出した。小僧はやかんと宿屋の女将さんから借りた長い腰ひものを持ってきた。そして、やかんの取っ手に腰ひもを結わえつけた。住職や小坊主達が見守る中、「おやかんさま、おやかんさま。大事な大事な預かり物がみつかりません。どうかどこへ仕舞い込んだのか教えてください」と言い、取っ手を擦るように腰ヒモをひっぱり、何度も何度も同じ文句を唱えた。「直ぐに見つかります」と小僧は言った。

 住職は半信半疑だったが、他に施す手もなかった。心労が祟った住職は痛風が再発させてしまったので、小坊主は慌てて床の間にあった薬箱を持ってきた。すると、薬箱の中から紫紐で結わえた上品な小箱が入っていた。それは探していた茶つぼだった。そして、住職はやかんに何度もお礼を言うと、やかんと腰ひもに向かって手を合わせ、有難い寺の宝物として所蔵したという。

(皆月 斜 /山口敏太郎事務所)

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