昨秋は勝ち星に恵まれず、ジャパンC(6着)→有馬記念(5着)では同世代のドリームパスポート((2)(4)着)に先着を許した。周囲の評価はすっかり逆転し、さらに追い討ちをかけるように瀬戸口厩舎はトレーナーの定年により2月末に解散。転厩初戦+休み明けにして59kgを背負わされる今回、復活を望むファンの厚い支持とは裏腹に、サムソンは艱難辛苦の道のりをたどっていた。
しかし、この男だけは違った。今年一年を占う意味でも大事な一戦に、主戦・石橋守騎手は「次があるので、馬の後ろにつけて折り合いをつけようと思った」。勝ち負けうんぬんは後からついてくる。鞍上はサムソンの力のみをただ信じていた。
レースは大方の予想通り、シャドウゲイトが主導権を握った。勝ち馬はこれを中団で眺めながら、3角あたりで早めにスパート。鞍上の思惑通りに道中でタメを利かせると、直線では持ち前の勝負根性を見せ、逃げ粘るゲイトを半馬身差競り落とした。派手さこそないが、最後にグイッとひと伸び。ハラハラドキドキのチョイ勝ちはいかにもサムソンらしい(?)。
「仕掛けのタイミング? 意外と逃げ馬が楽そうだったし、ペースも遅かったからね。59kgで休み明けということを考えればいい内容だった。放牧に出されてリフレッシュしていたのも良かったね」
何より、陣営に取って収穫だったのは、前半1000m通過62秒2という淡々とした流れにも、折り合いを欠くことなく、スムーズに運べたことだろう。「プレ春天」としては、まさしく申し分のないレースぶりだった。菊花賞(4着)では3000mが敗因のひとつに挙げられたが、07年を迎えて生まれ変わった“ニュー・サムソン”にとって、もはや淀の3200mは“敵”ではない。