乱菊を制したのは伏兵スリーロールスだった。
1枠1番を利して絶好のスタートを切ると、2番手集団の2、3番手という絶好のポジションでレースを進める。リーチザクラウンの大逃げにも惑わされることなく、鞍上との呼吸はピタリ。終始、ロスなくラチ沿いを走っていたとあって、2周目の4角を迎えても、たっぷりと余力が残っていた。迷わず内を突くと、一気に弾けた。これがGI初勝利となった若武者・浜中騎手は会心の笑顔を見せる。
「(ゴール前で)馬がターフビジョンを見て外に膨らんだときはヒヤッとしたが、馬を信頼してゆっくりゆっくりと進めた。折り合いは難しくないと思っていたし、理想の枠。人気はなかったけど、自分の中で手応えはあった」
浜中のコメント通り、直線で内から外に膨れる子どもっぽさを見せたが、逆にいえば、まだ遊びながらの戴冠劇。セールスポイントは? と聞かれた浜中が「成長力」と答えたように、まだまだ上昇の余地は残っている。
その伸びしろの大きさを陣営は早くから読み取っていた。5月の500万戦(京都)を勝った後、すぐさま放牧へと出したのも成長を促すためだ。武宏調教師が振り返る。「当時の状態ではダメだと思っていたからね。8月に帰ってきてトモの感じを見たら、これならいけると」
2回使って菊のローテーションも「春からこのプランを練っていた」(杉山助手)というのだから、成長力とともに長距離適性も見抜いていたことになる。武宏師が続ける。
「浜中も春から『秋も乗せてください』と言ってくれていた。きょうは100%、イメージ通りに乗ってくれた」
次走は年末のグランプリ・有馬記念と早くも明言。鞍上鞍下ともにたっぷりと残された成長力。枯渇気味の長距離シーンにニュースターが誕生した。