受験選手の多い1回目は観戦していなかっただけに、会場には「ナゼ?」の声も飛び交っていた。
「尾花監督はホークスの投手コーチとして名を馳せた人ですし、今、横浜球団がぐらついていますからね…。王(貞治)会長に今後のことでいろいろ相談したかったのでは」(メディア関係者)
尾花監督はトライアウト視察の目的を質問されたが、「(監督が直接視察することは)珍しいことでも何でもない」と返しただけ。繰り返しになるが、受験者の多い1回目を見送って、2回目だけを視察するのは得策ではない。球団職員が同監督の脇を固めていたため、それ以上の質問は遮られてしまったが、この不可解なトライアウト視察と前後して、横浜は補強を巡る『迷走』も露呈させている。
去る11月22日、楽天新監督の星野仙一氏(63)が大阪のラジオ番組で松井稼頭央内野手(35=前ロッキーズ3A)の獲得を表明した。その際、「巨人、横浜、オリックスとのせめぎ合い」とも語っていたが、横浜の加地隆雄・球団社長はこれを完全否定。しかし、米特派員、米メディアは「横浜もカズオを調査していた」と言い切る。この“食い違い”について、球界関係者がこう言う。
「社長の知らないところで動いていたのではないだろうか。本当に知らないとしたら、それはそれで問題だろうけど…」
同社長は09年11月のドラフト会議直前、地元・横浜高校の雄、筒香嘉智内野手(19)を「欲しい!」と公言し、横浜のスカウティング戦略を一変させている。その是非はともかく、『鶴の一声』で1位指名選手を変更させたということは、それなりの影響力を持った球団社長だと思われてきたが、「知らないところで松井稼獲得を動いていた」説が本当なら、横浜フロントは「ゴタゴタ続き」と言わざるを得ない。
「横浜は森本(稀哲=29)のFA獲得を目指しています。加地社長は森本に気を遣って、カズオの件は知らないと言ったのかな? でも、星野監督の発言をマスコミから聞かされたとき、物凄い怒りようでした」(取材陣の1人)
一般論として、球団売却の話が報じられる場合、「あとはオーナー会議での承認を待つだけ」といったふうに、最終段階のツメに入っている。従って、今回の横浜は異例中の異例であり、「買い手の付かない」とのレッテルも貼られた球団を再建するのは並大抵ではないだろう。
「横浜の補強はかなり遅れています。他球団も(経営再建に)協力するつもりはあるものの、横浜とのトレードを避けているような節も見受けられます。村田修一、ベテランの金城龍彦は残留しましたが、内川聖一の移籍は確実で、チームの精神的支柱だった佐伯貴弘が解雇され、すぐに中日に拾われた一件も、横浜ナインに暗い影を落としています」(前出・同)
尾花監督も球団売却騒動の際、買収側が“解雇リスト”に挙げられた1人。そのため、積極的に来季のチーム編成に携われなかったせいもあるだろうが、2回目のトライアウト会場で自軍職員とナイショ話をする姿は、痛々しくも見えた。内川喪失に備え、ソフトバンクの王会長に「人的補償を求める旨」をいち早く伝えているため、福岡入りしたのかもしれない…。