「エンゼルスは首位・アストロズに12ゲーム差以上も引き離されてしまいました。もうそろそろ、来季に向けて動き始めてもおかしくはありません」(米国人ライター)
大谷が復帰した直後、米スポーツメディアESPN(電子版)がこんなコラムを発表している。
<彼の復帰は、チームが勝ち始めなければならないことを示唆している。球団は彼を打者として起用するため、手術を先送りにしたようだが(中略)>
要するに、米球宴前に首位チームとのゲーム差を縮めておきたい。大谷は「打者出場のみ」に制限されているが、それでも起用してきた理由は理解できるというわけだ。しかし、チームが浮上できなければ、大谷に無理をさせる必要はないとも暗に訴えているようだった。
メジャーリーグでは、優勝圏内から外れたチームはいち早く「来季」に向けて動き出す。シーズン途中だが、主力選手を首位チームにトレードし、交換要員として若手をもらう。また、マイナーで奮闘している若手をテストしてくる。この慣例に従えば、大谷に無理をさせる理由がないので、「手術しなければならないのなら、一日も早く…」と、球団も考え方を変えてくるだろう。
「手術しなくても済むのかどうかはもう一度、検査をしてから結論を出すようです。仮に手術の必要がないと分かっても、休ませるんじゃないですか。治療とリハビリに専念させるために」(前出・米国人ライター)
こうしたエンゼルスの優勝戦線離脱による「治療専念」論に、NPBが「ヤバイ!」と考え始めたのだ。
「今年11月、日米野球が4年ぶりに開催されます。大谷の凱旋もあり得るとし、各方面に営業を掛けていたので、『手術』なんてことになったら…」(球界関係者)
同関係者によれば、もっと最悪な事態も考えられるという。エンゼルスは優勝戦線から脱落しても、「打者・大谷」を使い続ける。こちらも営業目的だが、シーズン終了と同時に治療とリハビリを開始させる予定を立てるのではないか、と――。
後半戦を治療で休んで、オフのイベントに出場したら、「何やってるんだ!?」と米国ファンは怒るだろう。また、こうも考えられる。エンゼルスの名将・ソーシア監督だが、契約は今シーズン終了まで。2000年から続く長期政権だが、近年はポストマッチ・シーズンに進出していないため、今季も勝率5割ラインをウロウロしている状況なら、球団も契約延長をためらうはず。となれば、ソーシア監督はポストマッチ・シーズン進出の可能性がゼロになるまで、総力戦を仕掛けてくる。大谷の右肘治療は先延ばしとなり、「ペナントレース終了と同時に病院へ」となりそうだ。
「11月の日米野球? 米国では全然報じられていませんよ。4年前はたしか9月に入ってから機構や選手会が動き出し、選手を集めたように記憶しています。『日米野球に行きたい選手はいませんか?』みたいな集め方でした」(前出・米国人ライター)
ダルビッシュ、田中将大も故障者リスト入りしているので、今オフは日米野球に出場できないだろう。マエケン、牧田和久は可能性があるが、ダイヤモンドバックスの平野佳寿は登板過多でダメかもしれない。
他の日本人メジャーリーガーの現状を考えると、大谷が凱旋できないかどうかで、やはり観客動員数は大きく変わる。大谷の回復具合をいちばん気に掛けているのは、エンゼルスではなく、NPBではないだろうか。(スポーツライター・飯山満)