3月17日、セ、パ両リーグは実行委員会を開き、セは予定通り、3・25開幕。仙台に本拠を置く楽天が被災したことを考慮し、パは18日遅らせ、4・12開幕を決めた。
この決定に待ったをかけたのが国。文部科学省は東京電力、東北電力管内でのナイター自粛を要請。蓮舫節電啓発担当相も開催時間、地域への配慮を求めた。
これを受けて、セ・リーグは19日に臨時理事会を開き、開幕を4日、すなわち1カード3試合を延期、3・29(火)開幕を決めた。これに伴い、東京電力管内では4月3日までのナイター自粛、延長戦は行なわない、可能な限り夏場も東京電力、東北電力管内ではデーゲーム開催に努力する等の案を出した。デーゲームであっても、大量の電力を消費する東京ドームを本拠とする巨人は、4割減の節電対策を示した。
選手会は、この中途半端な措置に難色を示しているが、妥協案に文科相は内諾したと伝えられ、22日にNPB(日本野球機構)が文科省を訪問し報告する。
国からの要請を受け、パと同日の4・12に合わせるものかと思われたが、わずか4日だけの延期に、野球に興味がない人のみならず、野球ファンの怒りも買っている。早期の開幕強行には、権力を持つ巨人の意向がたぶんに反映されているもよう。
「東京電力管内のヤクルトは反対したようですが、巨人派の横浜、西日本本拠の中日、阪神、広島は、早々に営利活動を始めたい巨人に逆らえなかったようです。当初予定の1カード3試合を飛ばした場合、4月5日からは東京ドームでのドル箱の巨人対阪神戦があります。4月3日まで東京電力管内のナイターは自粛しても、5日からの巨人対阪神はナイターで開催予定。なんとも巨人の都合を考慮した決定といわざるを得ません」(スポーツライターA氏)
東京電力管内では4月いっぱい、計画停電を実施することが予定されている。国民生活に支障が出るなかでの、セの開幕強行には疑問も多い。東京ドームで試合をすると、一般家庭3000〜4000世帯分の電力を消費するという。せめて、4月いっぱいは同管内でのナイター全面中止、東京ドームで予定される試合は野外の代替球場で開催するなどの配慮があれば、国民の理解も得られるだろう。しかし、これでは到底理解は得がたい。
自己の利益最優先に、「巨人ファンをやめる」、「巨人は川崎の2軍のジャイアンツ球場で試合しろ」、「東京ドームのある地域を試合時間に合わせて、計画停電しろ」などといった強硬な意見も聞こえてくる。
被災地や電力不足の関東の住民への配慮がないセ・リーグ。これでは、国民的スポーツからの陥落もいたしかたない。
(ジャーナリスト/落合一郎)