そう、指名打者制(以下=DH)に関するルール改定がされたので、「先発投手」と「DH」の2役で出場すると思われたのだが、ジョー・マドン監督はDH制を解除し、本来の9人野球で戦うことを選択した。
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「新DH制は『大谷ルール』とも呼ばれています」(米国人ライター)
改定されたDH制だが、大谷は「先発投手」と「DH」の2役で出場することができる。投手として降板した後も、DHとして試合に出続けることができるように“変更”されたわけだが、この恩恵を受けるのは大谷だけ。だから、「大谷ルール」と呼ばれているのだ。
「エンゼルスは大谷ルールを利用すべきです。『投手・大谷』を降板させた後も、1番バッターとして打席に立たせれば、その分、得点を挙げるチャンスも広がります」
マドン監督の選択に首を傾げる取材陣も少なくなかった。
しかし、開幕直前の4月5日(現地時間)、ドジャースとのオープン戦を中継していた米放送局BSウエストで、実況アナウンサーと解説者のこんなやり取りが見られた。
「大谷は昨季と同じくらい盗塁を仕掛けてくると思いますか?」
「いや、昨季よりも減ると思うよ」
2021年シーズン、大谷は26盗塁をマークした。リーグ5位である。
マドン監督は大谷を1番バッターで起用していくプランも明かしており、アナウンサーもそのことを前提に「盗塁数」のことを質問したのだ。
しかし、解説者はそれを否定した。その理由はこうだ。
「去年、大谷が積極的に盗塁を仕掛けたのは、得点圏の二塁に進むため。でも今年は、主力打者のトウラト、レンドンが復帰してきたから、盗塁を仕掛ける必要がないんだ」
その解説者とは、マーク・グビザ氏。エンゼルスのOBでもある。独自ルートで情報も掴んでいたのだろう。
その盗塁について、こんな見解も聞かれた。
「マドン監督は盗塁による体力の消耗を心配していました。投手で出場した時は大谷も盗塁を自重してくれるので、開幕戦で『1番・投手』で起用したのは、走って体力を消耗させないためでしょう」(前出・米国人ライター)
昨季、96個の四球を選んだが、一塁ベース上では常に「隙があれば」という“盗塁狙い”のスタンスも見せていた。そんな実直さも彼の魅力ではあるが、ペナントレースは長い。
「メジャーリーガーの故障は、走塁絡みのアクシデントが多いんです。野手との接触、不意をつかれた時の帰塁で指先を負傷することも少なくありません」(前出・同)
指先の怪我は、投手にとっては致命傷にもなりかねない。
今後、大谷ルールを適用し、投打の2役で“フル活動”させなければならない試合も出てくるだろう。開幕戦でDH制を解除したのは大谷を守るためであり、地区優勝のカギを握っている大事な選手とも言えそうだ。(スポーツライター・飯山満)