新・労使協定を巡る両者の話し合いが長期化し、それを憂いた選手会が、「合同キャンプ」を主催した。そこに、「大谷も来るらしい」との“未確認情報”が飛び交ったのである。
「米アリゾナ州のメサ市内にある球場施設で、合同キャンプが行われました。大谷はそこからクルマで移動できるところにあるジムでトレーニングをしています。個人でできる練習には限界がありますし」(現地記者)
交渉は難航しているが、合意できた議案もある。2023年からの「ルール変更」だ。
「大谷シフトがなくなります。極端に守備位置を変えるシフトが禁止となり、投手が捕手からボールを受け取ってから、投げるまでの時間を厳しくチェックされることになりました。ベースも3インチ(約8センチ)ほど大きくなります」(米国人ライター)
左バッターの大谷が打席に立つと、遊撃手が二塁ベースを越えて、一・二塁間まで移動してくることもあった。
MLB公式サイトによれば、昨季、大谷がセンターから右方向に打った打球は約77パーセント。内野手の頭上を越えていく打球ならともかく、本来ならば、一塁手と二塁手の間を抜けていく“ゴロ・ヒット”が「大谷シフト」によって阻まれてきた。
「2割5分7厘に終わった打率が、3割に到達するとの計算も弾き出されました」(前出・同)
新ルールは「打者・大谷」の打率アップにつながりそうだが、こんな見方もできる。
「投手・大谷」の別の一面もクローズアップされるのではないだろうか。
「大谷は守備も巧いですよ。極端な守備シフトの禁止案に選手会が賛成したのは、守備で好評価を受けてきた選手たちが、極端なシフトによって、アピールする機会を失っていたからです」(前出・現地記者)
大谷は守備も巧い。バントの少ないメジャーではその打球処理の速さをアピールできなかったが、エンゼルスも右方向への打球が多い左バッターに対し、「大谷シフト」を模倣してきた。
それがなくなれば、投手・大谷が一塁ベースカバーに走らなければならない場面も増えてくる。そのスピードと正確さに米国ファンは驚くはずだ。
また、投球モーションを開始するまでの時間が厳しく制限されるのであれば、捕手とのサイン交換も迅速に済ませなければならない。試合時間の短縮が目的だが、「間延びしない分、バッターは自分のテンポで打てる」とも言われているが、
「近年、日本プロ野球界では走者のいない場面でもクイックモーションを使って、対戦打者のタイミングを外しています。大谷も日本ハム時代に使っていました」(プロ野球解説者)
と、むしろプラスになるとの声も聞かれた。
大谷が合同キャンプへの参加を見送った理由は分からない。
そう言えば、2月上旬に開かれた選手会の決起集会にも姿を見せなかった。「金銭交渉よりも野球がしたい」と捉えているのだろう。その気持ちが、熱くなりすぎたオーナー陣営と選手会代表者にも届けば良いのだが。(スポーツライター・飯山満)