エリザベス女王杯は1着入線→12着降着の憂き目に遭ってしまったが、その内容はスイープトウショウもディアデラノビアも子ども扱い。やはり最強牝馬たるパフォーマンスを演じたのは、他でもないカワカミプリンセスだった。
主戦を務めていた本田騎手が引退し、調教師に転身。鞍上問題は昨秋以降の焦点となっていたが、カワカミと同じ路線を歩むであろうアドマイヤムーンの武豊騎手は常識的に難しい。陣営は熟慮に熟慮を重ねた上、弟の武幸騎手に手綱を託すことになった。
「ジョッキーはみんな『誰になるんやろう』なんて言っていましたよ。もちろん、ボクも予想すらしとらんかったし、西浦先生から最初に言われたときは、うれしさよりも正直、驚きの方が大きかったですわ。当然、断る理由なんてないですけどね(笑)」
表情はいつものごとく飄々(ひょうひょう)としているが、「プレッシャー?そらカワカミプリンセスやからね。あれだけの馬で、それがない方がおかしいでしょ。まあ、競馬で結果を出すことしか考えないようにしてますけど」とも。やはり“無敗馬”の主戦という大役に、少々の尻込みはあったという。
ここまではケイコには、3回騎乗。聞きたくなるのは印象についてだが、「繊細な、要するに牝馬らしいというのじゃなく、すごくタフな馬。男馬のような感じやね」と答えてくれた。
1週前追い切りはDWコースで6F80秒0→64秒2→51秒2→38秒2→12秒3。本番を翌週に控えた“愛馬”の感触について、開口一番「いい感じ」と笑顔で話した武幸騎手は続けてこう手応えを口にした。。
「1頭だとそれほどでもないけど、併せ馬の形になると闘争心をむき出しにして走る。やっぱり、走る馬っていうのはこういうのが大事なんでしょうね。とにかく、ここまではボクがカワカミプリンセスを知ることが大切やったし、3回もまたがれたのは大きい」
西浦師は今後の予定を「安田記念になるか、宝塚記念になるか。どちらにせよ、春は(ヴィクトリアMを含めて)2戦になるやろう」と明かした。無論、ここが叩き台という雰囲気はゼロだ。
まずは取りこぼした“女王”の称号を確実に獲りにいく。そして“女傑”から“女帝”へ。今季の飛躍のきっかけは、すべてここにかかっている。