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新重賞今昔物語 1999年桜花賞 福永のイチかバチかの賭けで女王に輝いたプリモディーネ

 プリモディーネといえば種牡馬アフリートが輩出した唯一の芝のGIホースだ。最近では産駒のバンブーエールなどが大活躍しており、ダート専用の一流種牡馬というポジションをすっかり確立した父にとって、一風変わった孝行娘といっていい。

 1999年の桜花賞はそうそうたるメンバーがそろった。1番人気は2歳女王のスティンガー。2番人気には牡馬相手に重賞を勝つなどした武豊騎乗のフサイチエアデール。プリモディーネは前年のファンタジーSを勝っていたものの、前哨戦のチューリップ賞が4着に終わったためか、4番人気とやや評価を下げていた。

 レースはそのチューリップ賞を逃げ切ったエイシンルーデンスのきっぷのいい逃げで始まった。800メートル通過が47秒ジャストのハイペース。直線が長くなった今の阪神ではまずお目にかかれない、懐かしの魔の桜花賞ペースだ。
 エアデールは6、7番手。スティンガーはスタートで大きく後手を踏んだ。プリモディーネは13番手にじっくり構えた。鞍上の福永は若手とは思えない肝のすわった騎乗をした。当時の小回り阪神は直線でゴチャつきやすく早めに動きたくなるもの。しかし、このときは前が開くまでジッと我慢した。プリモディーネの一瞬の瞬発力にかけたのだ。
 イチかバチの駆け引きは見事にハマった。馬群がバラけたところを一気に突き抜け、エアデールに1馬身1/2差をつける完勝だった。福永にとってGI挑戦25戦目での初勝利。後にマイルGIで突出した強さを発揮することになる名手が萌芽した瞬間だった。管理する西橋調教師にとっても、これがうれしい初GIとなった。
 続くオークスは血統からくる距離不安をささやかれながら追い込み鋭く3着に健闘。だが、その後は蟻洞(ぎどう)に悩まされ、勝ち鞍に恵まれないまま引退に追い込まれた。
 繁殖牝馬となったプリモディーネはアメリカに渡り、現在もラニメードファームで繋養されている。目立った仔はまだ出ていないが、近い将来、母を超える逸材が登場することを期待したい。

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