元プロ野球選手が高校生を指導するには、教員免許の取得と『2年間の実務経験』が必要となっている。それから約2カ月、規定緩和を目指し、プロ側が新たに『研修制度』を提案した。
「学生野球側の反応はむしろ良かったと思います。研修制度が実施されれば、規定はさらに緩和されるはずです」(NPB関係者)
NPBは『研修制度』について、文書で提出している。研修の内容は同会合の出席者が報道陣に説明した限りでしか分からないが、学生野球憲章、アマチュア野球の現状、プロアマ交流の歴史などを中心とした講義が行われるという。
09年秋、NPBがフェニックスリーグに参加したプロ野球の若手・中堅選手271人に行った『引退後に関するアンケート』の結果では、『引退後の希望進路』としてもっとも多かったのは、『指導者』だった。なかでも、高校野球指導者がトップで73%、プロ野球監督・コーチが63.8%、大学・社会人指導者が60.4%だった(複数回答可)。大学卒のプロ野球OBが教員免許を取得する場合、再入学して教員免許取得の講義を受け直さなければならない(2年間)。そこに『2年間』の実務経験が必要とされているため、高校野球のグラウンドに立つには最短で4年、高卒選手の場合に大学に進学しなければならないので、入学試験に一発合格できたとしても、「大学4年+実務経験2年」で6年を要する計算だ。
おそらく、NPB側は今回提案された研修制度を導入させることで、『教員免許』を取得しないでも学生野球の指導現場に復帰できるようにしたいのだろう。
この一連の“規定緩和”の話し合いだが、日本学生野球協会とは、高校野球の関係者だけで構成された組織ではない。大学生の大学組織も含まれている。学生野球協会の事務局長はこの日の会合後、こうも答えていた。
「大学側は問題ない。高校側はこれから各都道府県高野連に持ち帰って制度の是非を話し合うので時間が掛かるだろう」
どれくらいの時間を要するのだろうか…。
高野連という組織を平たく説明すれば、『高野連』に都道府県ごとの高野連がぶら下がっている。都道府県の会合で今回の提案が伝えられ、その是非を話し合った結果を踏まえて、全国を統括する『高野連』が最終的な結論を出す。これから、全国各地で夏の甲子園大会予選が始まるわけだから、結論を出すまでにそれなりの時間を要するのではないだろうか。
プロ野球選手会の松原徹事務局長は「いい話し合いができた」と報道陣に答えていたが、学生野球協会側は回答の時期を明確にはしていない。NPB側が早期決着を期待しているとしたら、混乱を招きそうである。(スポーツライター・美山和也)
※09年実施の<引退後に関するアンケート>は、『洋泉社新書 プロ野球戦力外通告〜終わらない挑戦編/序章』美山和也著)より引用いたしました。