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2011年センバツ大会特集(5)東北高校の健闘に何を思う…

 新3年生、新2年生−−。そんな出場選手の紹介がされる『第83回選抜高校野球大会』(以下センバツ)は、新年度のスタートであることを強く思わせてくれる。

 球児たちが体力強化に重点を置く冬のトレーニングを行っている際、日本高校野球連盟も多忙に追われていることはあまり知られていない。その一部を紹介すると、東京都高野連の指導者講習会(昨12月4日)、第25回高校野球研究会(昨12月5日)、元プロ野球在籍者の指導者資格に関する改定発表(昨12月8日)、次年度野球特待制度の採用に関する発表(同日)、センバツ推薦校の発表(昨12月15日/関連行事も含む)…。
 しかし、「重苦しい空気」に包まれる会合もある。「対外試合の禁止」、「謹慎」などを決める『審査室会議』(日本学生野球協会)だ。

 昨年12月9日、その会議で高校13件の処分が下された。
 ある高校は「対外試合禁止1年間」という非常に重い処分になった。発表によれば、2年生部員(当時)が1年生部員の腹を殴るなどの暴力があったそうだ。その高校は春季大会、甲子園予選、秋季大会の出場権を喪失し、練習試合もできなくなってしまった。処分期間は「1年間」だから、加害者以外の新3年生も、野球部活動を終わらされたようものである。
 そこまで重い処分を下さなければならなかった理由だが、同校は09年にも同様の部内暴力が報告されている。出席者が「心を鬼にした理由」は、そのときの被害者3人が加害者の側にまわったこと…。この日、13件の処分が発表されたが、うち8件が甲子園出場校だった。
 今大会の東北高校の健闘に、大会出場権を喪失した高校の部員たちは何を思っただろうか。

 名将・木内幸雄監督(常総学院)は甲子園を「最高の教育場所」と称したことがある。
 甲子園を経験していない学校はそれを目標とし、次に連続出場することを目指す。目標を全国で勝つことに高め、そのステップアップが野球部の歴史にもなっていくのだろう。高校野球の目的は、勝つことだけだとは思わない。「勝利を目指す過程で何を学ぶか」が重要ではないだろうか。

 北海道・鵡川高校が09年センバツ大会に出場した際、佐藤茂富監督にお話しを聞くことができた。同校は08年秋の北海道大会を優勝し、神宮大会もベスト4入りを遂げた。
 その北海道大会での決勝戦後、部員がゲームセットの瞬間に、人差し指を突き上げた。ナンバー1の意味をする歓喜のポーズである。そんな大団円のシーンは甲子園でもお馴染みになっていたが、監督は彼らを叱ったという。相手の気持ちを考えたら、そんなことはできないはずだ、と−−。決勝戦翌日、地元紙は監督の胴上げ写真を掲載しているが、その表情に笑顔はなかった。各メディアの要望を辞退したが、「どうしても」というお願いに折れ、その格好だけでシャッターを切ってもらったのが真相だ。

 自身の勝利を喜ぶ前に相手を讃える。勝利した相手の前ですぐ泣くのは失礼…。自分以外の相手には常に敬意を−−。3月28日、東北高校と大垣日大の一戦が観る者の心を打ったのは、「最高の檜舞台」の重みを知る両校が、ともに相手の健闘を讃え合っていたからではないだろうか。(了/スポーツライター・美山和也)

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