9月の欧州遠征で左足首を負傷し精彩を欠くなど、最近は代表での動きがあまりよくない。加えて新天地・エスパニョールでも確固たる地位を築けていないのだ。
4日のビジャレアル戦では、ボールに多く触れるボランチで先発したものの、味方DFの退場に伴ってわずか20分で下げられた。絶対的中心なら、そんな早い時間の交代などあり得ない。「このままスペインで不安定な状況が続けば、俊輔は来年の南アW杯にいないかも…」とさえ周囲にささやかれる状況である。
この悪循環を払拭するためにも、8日のアジア杯予選香港戦(日本平)では圧倒的な存在感を示したかった。
くしくもこの日は代表90試合目。98年フランスW杯で岡田武史監督に「落選」を突きつけられたカズ(三浦知良=横浜FC)を超える記念すべき一戦だ。「存在感はカズさんの方が上。自分は足元にも及ばない」と謙虚に言うものの、心の中では燃えるものがあったのではないか。
俊輔は中盤を流動的に動いてゲームを支配。闘莉王(浦和)の4点目をCKで演出し、岡崎慎司(清水)の6点目をお膳立てする絶妙のパスを出した。スペインで自由自在にプレーさせてもらえないウップンをここぞとばかりに晴らした。
6-0の大勝後は兄饒舌で「チームとしていい形ができた」と極めて前向き。岡田監督も「俊輔は決定的なパスを何本も通している。重要な選手だ」と絶賛。自信を失いかけていた男にとって、指揮官の絶大な信頼はやはり大きい。実際、このエースが際立たなければ、南アW杯での日本の成功はない。98年のカズと同じ轍を踏んでもらっては困るのだ。香港という弱小国相手の圧勝は、俊輔の再浮上のいいきっかけになるかもしれない。