「お客さん、こういう店って、よく行くんですか?」
「キャバクラ? よく行くよ」
「お客さん、札幌の人じゃないでしょ」
「どうしてわかったの?」
「だって、こういう店を『キャバクラ』って言ったから」
一般に、東京などで「キャバクラ」というと、キャバクラ嬢が男性客の横について接客する店を指します。しかし、札幌では、そうした店を「ニュークラブ」と呼び、「キャバクラ」というのは、一般にいう「おさわりパブ」「セクシーキャバクラ」のことを言います。
このことは、全国の繁華街で遊んでいる人には当たり前の話です。私もこのことを知っています。新宿歌舞伎町で知り合った北海道出身の嬢が教えてくれたのです。慣れというのは怖いもので、先日訪れたすすきので、上記のように、「ニュークラブ」を「キャバクラ」と言ってしまったのです。
歌舞伎町などで遊んでいる私からすると、不思議に思うのは、呼び名だけではありません。料金です。「ニュークラブ」では、安いところで初回のセット料金が1980円だったりします。高くても1セットで一万超えることはありません。すすきのの「キャバクラ」でも、歌舞伎町の安いキャバクラの料金だったりします。
単に働くというのなら、絶対、歌舞伎町のほうがいいんじゃないか? と私なら思ってしまいます。女の子もそう言ったことがあります。すると、
「知ってるよ。友達が歌舞伎町で働いているから。でも、東京って、人がたくさんいて疲れちゃう。それに、札幌が好きなんです」
と言ったのです。同じようなことを他の嬢にも聞いたことがありますが、すすきのの嬢は地元が好きなんだなって思います。一度は歌舞伎町や六本木、横浜に出ていたりします。なかには高級店で働いた経験だってあるようです。
しかし、結局はすすきのに戻るのです。そして、多くの嬢は、がっついていません。そんなスローペースなすすきの夜が過ぎていきました。
<プロフィール>
渋井哲也(しぶい てつや)フリーライター。ノンフィクション作家。栃木県生まれ。若者の生きづらさ(自殺、自傷、依存など)をテーマに取材するほか、ケータイ・ネット利用、教育、サブカルチャー、性、風俗、キャバクラなどに関心を持つ。近刊に「実録・闇サイト事件簿」(幻冬舎新書)や「解決!学校クレーム “理不尽”保護者の実態と対応実践」(河出書房新社)。他に、「明日、自殺しませんか 男女7人ネット心中」(幻冬舎文庫)、「ウェブ恋愛」(ちくま新書)、「学校裏サイト」(晋遊舎新書)など。
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